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3 公判の審理期間 憲法は第三七条において,被告人に対し迅速な裁判を受ける権利を保障し,刑事訴訟法はこれをうけて,その第一条に,適正迅速な裁判の実現を,刑事手続の理念の一つとして掲げている。まことに,迅速な裁判の実現は,わが国の裁判に課せられた重大使命の一つといわなければならない。この点からみて,わが国における,公判手続による裁判の審理期間はどうであろうか。
まず,起訴の日から第一審判決までの審理期間をながめてみよう。II-18表・19表は起訴から第一審の終局判決までの期間を,年度ごとに百分率にして,地方裁判所と簡易裁判所とを合計したものと,地方裁判所のみのものとに分けて示したものであるが,各年とも,総数の八〇%以上が,起訴後六か月以内に判決が言い渡されている。地方裁判所と簡易裁判所との合計と,地方裁判所のみのものとを比較すると,前者は一か月以内,二か月以内の率が比較的高いのに対し,後者は,三か月以内およびそれより長い審理期間のものの率が高くなっている。これは,地方裁判所が簡易裁判所にくらべて,複雑な事件をとりあつかうためであろう。 II-18表 第一審(地方,簡易裁判所)終局人員の審理期間別百分率(昭和35〜37年) II-19表 地方裁判所をおおける審理期間別百分率(昭和35〜37年) 次に,地方裁判所のうちでも,一般に複雑または重大な事件をとりあつかう合議部における審理期間についてみると,II-20表のとおりである。これによると,各年とも起訴後六か月以内に判決が言い渡されているのは,約六五%にすぎず,一年以内が約一五%,二年以内が約一〇%,二年を越えるものが約一〇%となっており,かつ二年を越えるものの割合が,昭和三七年には前年よりかなり顕著な増加を示しているのが注目される。II-20表 地方裁判所合議部の終局人員の審理期間別百分率(昭和35〜37年) 以上によってみれば,第一審公判における裁判の遅延の問題は,主として,地方裁判所合議部における審理状況に関するものといえよう。 |