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 昭和39年版 犯罪白書 第二編/第二章/一/2 

2 起訴後の勾留と保釈

 裁判所は,被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で,被告人が定まった住居をもたないとき,罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき,あるいは逃亡し,または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときは,これを勾留することができる。勾留期間は,公訴提起の日から二か月間であるが,とくに継続して勾留する必要がある場合は,一か月ごとに更新される。しかし特定の場合以外は,この更新は一回に限られている。
 最近二年間の各年末現在における勾留中の被告人の数と,その勾留期間を百分率で示すと,II-15表のとおりである。これによると,勾留期間が二か月以内のものは総数の六一-六三%であり,これに三か月以内のものを加えると,約七四%となり,残りの約二六%が,例外的に三か月以上の勾留をうけたことになるが,とくに長期の勾留,たとえば勾留期間が一年をこえるものは,総数の約三%となっている。

II-15表 年末現在勾留中の者の勾留期間別百分率(昭和36,37年)

 次に,保釈についてながめてみよう。勾留されている被告人は,保釈によって,一定の条件のもとに釈放される。この保釈には,保釈の請求があったとき,必ず保釈を許可しなければならないもの(必要的保釈という)と,必要的保釈には該当しないが,裁判所が適当と認めた場合に保釈を許すところの裁量保釈,および保釈の請求はないが,裁判所の職権により保釈を許すところの職権保釈,さらに勾留が不当に長くなったとき,請求をまってなされる刑訴法第九一条による保釈がある。
 昭和三四年から三六年までの三年間に,通常第一審の判決のあった被告人のうち,起訴時に勾留中であったもの,および第一審判決までに保釈によって釈放されたもの等の状況をみると,II-16表のとおりである。すなわち,昭和三六年は通常第一審の判決があった一〇一,七七八人のうち,起訴時に勾留中であったものが七三・六%の七四,九〇四人で,そのうちの三〇・三%の二二,七〇七人が保釈によって釈放されている。この保釈の率は,昭和三四年は二四・四%,昭和三五年は二七・二%で,逐年増加の傾向を示している。起訴時勾留中であったものの率は,II-16表の示すとおり,年年減少しているから,通常第一審終局時に身柄を拘束されている被告人の割合が,年とともに減少していることが明らかである。このような傾向は,被告人の人権保障の面からは好ましいといえようが,刑事手続運用全体の立場かちみれば,裁判の迅速化や被告人の逃亡防止に支障を来していないかどうか等の点も考慮に入れなければならず,さらに慎重な検討を必要としよう。

II-16表 通常第一審終局被告人の保釈状況(昭和34〜36年)

 保釈されるためには保釈保証金を納付しなければならない。この金額は,犯罪の性質および情況,証拠の証明力ならびに被告人の性格および資産などを考慮じて,裁判所が決定するのであるが,要するに,被告人が逃走することを防ぎ,公判延へ出頭することを確保するに足りる相当な額であることが必要である。いま,昭和三四年から三六年に至る三か年間の,保釈保証金の金額別の分布をみると,II-17表のとおりである。この表によると,比較的低額のものが順次減少し,高額のものが逐年増加していることがわかる。その中間にある一万円以上五万円未満のものが,各年度とも最も多く,昭和三六年には総数の七二・六%を占めている。なお,昭和三六年一二月末日現在で,保釈中に逃走した被告人数は三,六九五人で,同日現在係属事件の被告人総数の六・七%である。

II-17表 保釈保証金額別百分率(昭和34〜36年)