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 昭和39年版 犯罪白書 第二編/第二章/一/1 

第二章 裁判

一 裁判の概況

1 確定裁判

 昭和三七年に確定裁判を受けた者の総数は三,四七九,一三五人である。その審級別内訳を昭和三六年と対比し,昭和三五年を一〇〇とする指数によって,その増減の状況を示すと,II-12表のとおりである。

II-12表 審級別確定裁判を受けた人員(道交違反を含む)(昭和36,37年)

 まず最も多いのは第一審確定で三,四六六,五三四人,確定総数の九九・六%に達している。これは,道交違反の略式裁判で罰金刑に処せられたものが圧倒的に多く,そのほとんどが,そのまま第一審で確定するためである。これに対し,控訴審確定は八,七一六人で〇・三%,上告審確定は三,八八五人で〇・一%にすぎない。次に,確定裁判の実数についてみると,最近三か年間,逐年増加しているが,昭和三五年を一〇〇とする指数で示すと,昭和三六年は一一四,昭和三七年は一六三となる。これは略式裁判による一審確定事件が増加したことによるものである。
 次に,昭和三七年における確定裁判をその内容別に区分し,総数に対する百分率を算出し,これを昭和三六年と比較してみると,II-13表のとおりである。なお,この表は昭和三五年を一〇〇とする指数によって裁判の内容別の増減の状況をも示している。

II-13表 裁判結果別確定裁判を受けた人員(道交違反を含む)(昭和36,37年)

 この表で目だっているのは,罰金刑の増加である。昭和三七年には総数の九六・四%が罰金刑であり,昭和三五年を一〇〇とすると,昭和三六年は一五三,昭和三七年は二三二という飛躍的な増加率を示している。これは年年増加の一途をたどっている道交違反が大部分,罰金刑に処されている結果にほかならない。次に,目につくのは科料の減少である。昭和三五年には総数の二七・七%を占めていた科料が,昭和三六年には五・一%,昭和三七年には〇・五%に減少し,指数をみても,昭和三五年を一〇〇とすると,昭和三七年には三と減少している。このように,科料が激減したのは,昭和三五年一二月二〇日施行の道路交通法により道交違反の法定刑から科料が大幅に削除され,従前,数多く科料ですまされていた道交違反を科料に付する余地が少なくなったこと,道交違反を含めて科刑が重くなったこと,および,近時一千円未満という科料の財産刑としての価値が低く評価されるに至り,他に選択刑がある場合には,あまり適用されなくなったことなどによるものであろう。
 次に,注目されるのは,禁錮刑の増加である。すなわち,昭和三五年を一〇〇とすると,昭和三六年には一四〇,昭和三七年には二〇七となっており,最近三年間に二倍以上となっている。これは自動車による業務上過失致死傷事件が増加し,しかもその科刑が漸次重くなり,禁錮刑を科せられるものが多くなってきた結果である。
 次に公訴棄却の増加が顕著であり,昭和三五年を一〇〇とすると,昭和三七年には二九六に達している。これは道交違反事件の略式起訴の増加に伴い,略式命令不送達による公訴棄却がふえたためと思われる。
 次に,懲役刑であるが,これは最近三か年間,逐年減少し,昭和三五年を一〇〇とすると,昭和三六年は九二,昭和三七年は八八になっている。このような減少傾向は,特に窃盗,詐欺,横領,強盗,賍物故買等の財産犯に目だっている。
 次に死刑は,昭和三五年が三三人,昭和三六年が二二人,昭和三七年には一四人と減少しているが,昭和三四年は一四人であり,一がいに減少の傾向にあるとは言い切れず,なお今後の推移を見まもるべきであろう。
 最後に無罪であるが,昭和三七年には前年に比し,やや増加しているが,確定裁判総数中に占める割合は,昭和三六年同様〇・〇一%という,きわめて低い率を示している。
 次に,懲役刑と禁錮刑を刑期別に区分して昭和三六年と対比すると,II-14表(1)および(2)のとおりである。

II-14表 自由刑の刑期等別人員(昭和36,37年)

 まず懲役であるが,無期は六〇人,総数の〇・一%で,昭和三六年よりわずかながら減少している。有期懲役の中で目だっているのは,その実刑の中で一年以下が四九・〇%を占め,これに三年以下を加えると,有期懲役実刑中の九一・四%を三年以下が占めていることである。このことは昭和三六年においても同様であり,しかも執行猶予の刑期は三年以下に限られるから,全体として,わが国の懲役刑の刑期が,比較的短期に集中していることが明らかである。次に,目につくのは執行猶予が多いことで,昭和三七年には懲役刑総数の五一・七%を占めている。このように執行猶予の率が高いことと,刑が短期に集中し,長期刑が比較的に少ないことが,戦後の科刑の大きな特色となっている。
 この傾向は,禁錮刑の場合に,さらに顕著にあらわれている。すなわち,総数の七七・一%までが執行猶予であり,残りの実刑の中の九四・二%までが,一年以下の短期刑である。ただ禁錮刑で注目されるのは,その実刑の実数が,昭和三七年には,前年の五三三人から八八三人と,著しい増加を示していることである。これは,主としては,禁錮刑の大半を占める業務上過失致死傷について,実刑が言い渡される数がふえた結果である。