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 昭和39年版 犯罪白書 第一編/第二章/一/4 

4 性犯罪

 昭和二九年以降最近一〇年間の性犯罪の発生件数の推移をみると,I-12表のとおりである。この表で,「わいせつ行為」とは,強制わいせつ,公然わいせつをさし,「わいせつ物」とは,わいせつ文書,図画等の販売,頒布あるいは公然陳列などの犯罪をさす。したがって「わいせつ物」は,強かんとか強制わいせつなどとは多少性質を異にし,むしろ風俗犯罪として取り上げる方がよいようであるが,ここでは統計上のつごうから一応,性犯罪として取り扱うことにした。

I-12表 性犯罪発生件数(昭和29〜38年)

 強かんは,昭和三三年に急激に増加し,その後,昭和三六年まで引きつづき増加傾向を示していたが,昭和三七年には減少し,以後あるいは,そのまま減少してゆくのではないかとの希望が持たれたのであるが,昭和三八年にはその期待に反し,わずかではあるが再び増加している。「わいせつ行為」は,昭和三一年まで減少傾向にあったが,翌三二年からは逐年増加の一途をたどり,特に昭和三八年の増加が目だっている。「わいせつ物」も昭和三一年まで減少傾向にあったものが,翌三二年から年年増加し,昭和三七年に至るまで「わいせつ行為」と同様な増加曲線をたどっている。ただし昭和三八年には,「わいせつ行為」の増加とは逆に減少しているのが目につく。
 次に,最近一〇年間の検挙人員の推移を成人と少年に区分してみるとI-13表のとおりである。強かんは,昭和三四年までは,成人も少年もほぼ同様な増減を示しているが,昭和三五年以後は,少年と成人との間に別別な傾向が現われている。すなわち,少年の強かんは昭和三三年をピークとして順次減少しているのに対して,成人の強かんは,昭和三五年,三六年と増加し,特に三六年は最近一〇年間のうち最も多い検挙人員数となり,翌三七年に減少したにもかかわらず,三八年には再びわずかながら増加している。このように,成人の増減変動にかかわりなく,少年の強かんが逐年減少していることは,よろこばしい傾向であるが,強かんの検挙人員総数のうち少年の占める割合が,昭和三二年以後常に五〇%以上となっている点は,見のがしてはなるまい。

I-13表 性犯罪検挙人員(昭和29〜38年)

 次に「わいせつ行為」であるが,成人においては,昭和三一年までその増減に動揺があったが,三二年以後は逐年例外なく増加しているのが目だち,一方,少年においても,多少の起伏はあるにしても,おおむね増加傾向を示し,前述のとおり少年の強かんが減少傾向にあるのと対照的であるのが注目される。
 次に「わいせつ物」であるが,犯罪の性質上,少年の占める割合が極めて小さいことは当然であるが,成人も少年も概して増加傾向にあり,かつ,少年の増加率は成人に比してより大きい。