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1 保護観察対象者の動向 (1) 保護観察対象者数 5-5-2-1図は,仮出獄に係る保護観察新規受理人員及び保護観察付き執行猶予に係る保護観察新規受理人員(以下,それぞれ「仮出獄新規受理人員」,「保護観察付き執行猶予新規受理人員」という。)について,昭和48年以降の推移を見たものであり,5-5-2-2図は,それぞれについて,年末における保護観察係属人員の推移を見たものである。
仮出獄新規受理人員は,平成8年以降増加傾向にあり,15年は1万5,784人であった。一方,保護観察付き執行猶予新規受理人員は,平成元年以降4千人ないし5千人台で推移し,15年は5,371人であった。有罪言渡し人員が増加し,実刑人員及び単純執行猶予人員が共に増加する中,保護観察付き執行猶予者はおおむね横ばいを続けている。 一方,保護観察年末係属人員について見ると,平成15年12月31日現在で,仮出獄者は7,949人,保護観察付き執行猶予者は1万5,767人である。保護観察付き執行猶予者は,仮出獄者と比較して保護観察期間が長期であることから,年末係属人員で見ると,保護観察付き執行猶予者の方が多い。 5-5-2-1図 保護観察新規受理人員の推移 5-5-2-2図 保護観察年末係属人員の推移 (2) 保護観察期間 5-5-2-3図[1]は,昭和48年以降における仮出獄新規受理人員について,保護観察期間別の構成比の推移を見たものである。昭和59年に仮出獄の適正・積極運用施策(本編第4章第2節2参照)が開始されたのを契機に,保護観察期間が1月以内の者が極めて少数となり,さらに,平成6年以降保護観察期間が比較的長期の者の比率が徐々に高くなっている。しかし,15年においても保護観察期間1年以内の者が93.9%,6月以内の者が67.4%を占めており,保護観察付き執行猶予者と比較すると,短期間の者が圧倒的に多い。
同図[2]は,保護観察付き執行猶予新規受理人員について,同様に保護観察期間別の構成比の推移を見たものである。保護観察期間3年以内及び4年以内の者が一貫して全体の8割程度を占めており,仮出獄者と比べて長期の者が非常に多いことが分かる。また,平成13年以降,保護観察期間5年以内の者の比率が上昇する傾向が現れており,15年は全体の17.6%を占めている。 5-5-2-3図 保護観察新規受理人員の保護観察期間別構成比の推移 (3) 罪名 5-5-2-4図[1]は,昭和48年以降における仮出獄新規受理人員の主要罪名(昭和48年又は平成15年において上位5位以内であったもの)別構成比の推移を見たものである。
一貫して多いのは窃盗であり,また,覚せい剤取締法違反が昭和48年の92人から平成15年の4,025人へと大幅に増加しているのが目立つ。 同図[2]は,保護観察付き執行猶予新規受理人員について,同様に主要罪名別構成比の推移を見たものであるが,窃盗が一貫して多いことは仮出獄の場合と同様である。覚せい剤取締法違反は,昭和50年代から平成10年ころまでは多かったが,ここ数年減少している。 5-5-2-4図 保護観察新規受理人員の罪名別構成比の推移 (4) 年齢 5-5-2-5図[1]は,昭和48年以降における仮出獄新規受理人員の年齢層別構成比の推移を見たものである。
仮出獄者も,受刑者同様高齢化が進行しており,60歳以上の者の占める比率は,昭和48年の0.9%から平成15年の6.9%へと大幅に上昇した。また,15年の仮出獄新規受理人員に占める65歳以上の者の比率は2.8%であった。同図[2]は,保護観察付き執行猶予新規受理人員の年齢層別構成比の推移を見たものである。やはり高齢者の比率は上昇しているが,仮出獄者と比べると,年齢は全体的に若い。 5-5-2-5図 保護観察新規受理人員の年齢層別構成比の推移 (5) 女子 5-5-2-6図は,昭和48年以降における成人の女子保護観察新規受理人員及び女子比の推移を,仮出獄者と保護観察付き執行猶予者の別に見たものである。いずれも,女子比は長期的に上昇傾向にあり,平成15年は,仮出獄者では8.0%,保護観察付き執行猶予者では10.9%であった。女子に多い罪名は覚せい剤取締法違反と窃盗であり,同年においては,女子の仮出獄者1,260人中567人が覚せい剤取締法違反,317人が窃盗であり,また,女子の保護観察付き執行猶予者については,586人中204人が窃盗,196人が覚せい剤取締法違反であった(保護統計年報による。)。
5-5-2-6図 女子保護観察新規受理人員及び女子比の推移 (6) 生計状況 5-5-2-7図[1]は,昭和54年以降における仮出獄新規受理人員について,保護観察開始時の職業の有無及び貧困率の推移を見たものである。
保護観察開始時に無職である者の比率は,上昇傾向にあり,昭和54年の53.6%から平成15年の75.9%へと上昇している。また,保護観察開始時に生計状況が「貧困」であった者(受理時調査において,保護観察官が,各種資料に基づき「貧困」と認定した者をいう。)の比率は30%台で推移し,大きな変動はない。 同図[2]は,保護観察付き執行猶予新規受理人員について,保護観察開始時の職業の有無及び貧困率の推移を見たものである。無職者の比率は,昭和54年の26.1%から平成15年の55.6%へと上昇しており,仮出獄者と比較して人員は少ないものの,上昇傾向が著しい。貧困率も上昇傾向が顕著である。 このように,近年,仮出獄者及び保護観察付き執行猶予者のいずれについても,保護観察開始時に無職である者が多く,就労の確保が重要な課題となっているといえる。 5-5-2-7図 保護観察新規受理人員の職業の有無及び貧困率の推移 5-5-2-8図は,昭和48年以降における保護観察終了人員について,保護観察終了時の職業の有無を仮出獄者と保護観察付き執行猶予者の別に見たものである。いずれも保護観察開始時と比べて有職者の比率は上昇しており,保護観察中に就労状況が改善していることが分かる。他方で,保護観察終了時においても無職である者の比率は年々上昇しており,景気や雇用情勢が保護観察対象者の社会復帰に難しさを加えていることがうかがえる。 5-5-2-8図 保護観察終了時の職業の有無の推移 (7) 保護観察開始時の居住状況 5-5-2-9図は,昭和54年以降の保護観察新規受理人員について,保護観察開始時の居住状況の推移を,仮出獄者と保護観察付き執行猶予者の別に見たものである。いずれも,配偶者と同居する者の比率が低下する傾向が見られる。
また,仮出獄者の方が,更生保護施設を帰住先とする者の比率が高くなっており,平成15年には,仮出獄者の23.7%(3,738人)が更生保護施設に帰住している。なお,10年以降,仮出獄者のうち更生保護施設に帰住する者の比率が低下する傾向が見られる。 5-5-2-9図 保護観察新規受理人員の居住状況の推移 5-5-2-10図は,平成15年における仮出獄新規受理人員について,行刑施設入所度数別に帰住先を見たものである。入所度数が増えるほど親と同居する者の比率が低下し,更生保護施設を帰住先とする者が多い。5-5-2-10図 仮出獄新規受理人員の入所度数別の居住状況 (8) 保護観察の終了事由 5-5-2-11図[1]は,昭和48年以降に保護観察を終了した仮出獄者について,保護観察終了事由の推移を見たものである。
仮出獄者の90%ないし95%は期間満了で終了しており,平成15年における期間満了者の比率は92.6%であった。一方,仮出獄取消しで終了する者の比率は,4%台から8%台で推移しており,15年における比率は6.6%であった。 仮出獄取消しが多い罪名は,窃盗及び覚せい剤取締法違反である。平成15年における仮出獄取消し総数のうち,窃盗が51.4%,覚せい剤取締法違反が25.7%であり,この2罪名で4分の3以上を占めている(保護統計年報による。)。 同図[2]は,昭和48年以降に保護観察を終了した保護観察付き執行猶予者について保護観察終了事由の推移を見たものである。 期間満了で終了する者の比率は,62%台から75%台で推移しており,平成15年は64.3%であった。執行猶予取消しで終了する者の比率は,22%台から34%台で推移しており,15年は33.0%であった。期間満了者の比率が仮出獄者より低くなっているが,これは保護観察付き執行猶予者の方が,保護観察期間が長いことに加え,施設内処遇を経て仮出獄を許された者と比べて,保護観察への認識や動機付けが低いことなどの要因が影響しているものと思われる。 執行猶予取消しが多い罪名は,窃盗及び覚せい剤取締法違反であり,それぞれ執行猶予取消し総数の43.2%,18.7%を占めている(保護統計年報による。)。 5-5-2-11図 保護観察終了事由の推移 以下では,項を改め,保護観察処遇に当たって固有の困難を伴う高齢者,覚せい剤対象者及び長期刑仮出獄者について見ることとする。 |