前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
1 仮釈放準備調査 (1) 制度の概要と沿革 仮出獄審理を充実させるためには,行刑施設内における本人の生活ぶり,心身の状況,仮出獄後の環境など多岐にわたる情報の収集が欠かせないが,仮出獄の申請を待ってこれらの調査に着手していたのでは,十分な資料収集を行うことは難しい。そこで,仮出獄の申請がされる前の段階から,地方更生保護委員会所属の保護観察官が仮釈放準備調査を行う制度が昭和41年から導入されている。
調査の実施対象は,制度導入当初は一部の少年施設に限られていたが,やがて成人施設にも拡大され,平成2年からはすべての矯正施設で実施されている。5-4-3-1図は,同年以降における受刑者に係る仮釈放準備調査の実施状況を見たものである。その実施人員は,増加傾向にあり,積極的に実施されていることが分かる。 5-4-3-1図 受刑者に係る仮釈放準備調査の実施状況 (2) 仮釈放準備調査の内容 受刑者に対する仮釈放準備調査は,地方更生保護委員会所属の保護観察官による受刑者との面接及び関係記録の閲覧,環境調整を担当する保護観察所の職員との連絡などによって実施される。調査を担当する保護観察官は,受刑者の心身の状況,生活歴,犯行の動機及び原因,被害弁償の状況,帰住予定地の環境,家庭の状況等に関する調査を行うだけでなく,本人の社会復帰を円滑にするための相談に応じ,助言を行うなど,ケースワーカーとしての役割も期待されている。
仮釈放準備調査の結果は,仮出獄審理の重要な資料となるだけでなく,保護観察所にも送付され,環境調整実施上,あるいは仮出獄後の保護観察処遇のための参考資料としても活用される。 (3) 施設駐在官 仮釈放準備調査を一層充実させるため,地方更生保護委員会の保護観察官が行刑施設に常駐して調査を行う施設駐在官制度が,昭和59年から実施されている。施設駐在官は,仮釈放準備調査だけでなく,行刑施設が行う釈放前指導等に対する協力,行刑施設の行う処遇関係会議への参列など,矯正と保護の橋渡し的な役割をも果たしている。平成15年年末現在,施設駐在官が配置されているのは,犯罪傾向が進み,処遇困難な受刑者が多く収容されている大規模施設10か所(札幌,宮城,府中,横浜,名古屋,京都,大阪,神戸,広島及び福岡の各刑務所)である。
|