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1 新受刑者の動向 (1) 新受刑者数の推移 5-3-2-1図は,昭和48年以降における新受刑者数の推移を見たものである。新受刑者は平成5年以降増加を続けており,特に最近5年間は毎年おおむね1,000人ないし3,000人の増加を示している。15年の新受刑者は3万1,355人で,昭和48年以降では,59年,60年,57年に次いで4番目に多い。
5-3-2-1図 新受刑者数の推移 (2) 年齢 5-3-2-2図は,昭和48年以降における新受刑者の年齢層別構成比の推移を見たものであるが,高齢化傾向が顕著である。48年から50年代半ばにかけて,まず,20歳代以下の層が大きく減少し,また,近年まで,50歳代及び60歳以上の層の増加が続いている。20歳代以下の者の比率は,48年が46.1%,平成15年が22.6%であり,一方,60歳以上の者の比率は,昭和48年が1.3%,平成15年が9.3%(65歳以上が4.3%)となっている。
5-3-2-2図 新受刑者の年齢層別構成比の推移 (3) 性別 5-3-2-3図は,昭和48年以降における女子新受刑者数及び女子比(新受刑者に占める女子の比率)の推移を見たものである。平成15年における女子新受刑者は1,867人で,女子比は6.0%となっている。女子比は一貫して上昇傾向にある。
5-3-2-3図 女子新受刑者数及び女子比の推移 (4) 国籍等 5-3-2-4図は,昭和48年以降における外国人新受刑者数の推移を国籍等の別に示すとともに,その中に占めるF級受刑者(日本人と異なる処遇を必要とする外国人)の比率を示したものである。昭和55年以前は,外国人新受刑者のほとんどが韓国・朝鮮の国籍等の者であり,F級の比率も非常に低く,この当時は,外国人受刑者といっても,その多くが我が国の社会に定着している韓国・朝鮮人であって,現在におけるような外国人受刑者の問題がなかったといえる。
その後,平成4年ころから同図の「その他」が増加傾向を示すようになるとともに,F級比率が著しい上昇を示している。これは,来日外国人による一般刑法犯検挙件数が,それ以外の外国人による一般刑法犯検挙件数を上回るようになった時期とほぼ一致しており(1-2-2-2図参照),4年前後を起点として,刑事政策面における「来日外国人問題」が顕著となってきたことを示している。 平成15年における外国人新受刑者は2,150人,うちF級受刑者は1,584人(73.7%)であり,同年におけるF級新受刑者の国籍等は40以上,同年年末に在所するF級受刑者の国籍等は70以上の国・地域に及んでいる(矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。なお,5-3-2-4図において,国籍等に関する区分が韓国・朝鮮,中国,米国及び「その他」となっているのは,平成6年以前の矯正統計には,その4区分しかなかったことによる。 5-3-2-4図 外国人新受刑者数及びF級比率の推移 (5) 罪名 5-3-2-5図は,昭和48年以降の新受刑者の罪名別の推移を男女別に見たものである。近年の状況を見ると,男女ともに,窃盗と覚せい剤取締法違反が多く,男子の場合にはこの両者で新受刑者の約半数,女子の場合には6割以上を占めている。昭和48年と比較すると,男女ともに覚せい剤取締法違反が著しく増加したことが分かる。
5-3-2-5図 新受刑者の罪名別の推移 (6) 刑期 5-3-2-6図は,昭和48年以降における懲役新受刑者の刑期別人員の推移を見たものである。50年代後半から刑期1年以下の者が減少し,次いで,刑期の長い者が増加傾向を示しており,全体に長期化傾向がみられる。
5-3-2-6図 懲役新受刑者の刑期別人員の推移 (7) 入所度数 5-3-2-7図は,昭和48年以降の新受刑者について,初入者数,再入者数及び初入者比率の推移を見たものである。
昭和50年から60年ころにかけて新受刑者が増加した当時は,初入者がほぼ横ばいで再入者が増加していたのに対し,近年においては初入者,再入者ともに増加しており,特に初入者の増加が著しい。また,初入者の比率は,平成に入って以降上昇傾向にあり,平成13年には過半数を超え,15年は51.9%となった。このように,近年,処遇効果が出やすいと考えられる初入者が増加しており,改善更生・社会復帰に向けた処遇に力を入れる意義が一層大きくなっていると考えられる。 5-3-2-7図 初入・再入別新受刑者数の推移 (8) 暴力団関係者 5-3-2-8図は,昭和48年以降の新受刑者中の暴力団加入者の数及び比率の推移を見たものである。暴力団加入者の比率は,52年から平成3年までおおむね25%前後で推移していたが,4年以降低下傾向にあり,15年は13.7%(4,309人)となった。
5-3-2-8図 新受刑者中の暴力団加入者数の推移 (9) 職業 5-3-2-9図は,昭和48年以降における新受刑者の有職・無職別構成比を完全失業率の推移と共に示したものである。新受刑者中の無職者の比率は上昇傾向にあり,平成15年は66.8%(2万928人)となった。無職者の比率と完全失業率の上昇・下降はおおむね連動している。
5-3-2-9図 新受刑者の有職・無職別構成比の推移 (10) 配偶関係 5-3-2-10図は,昭和48年以降における新受刑者の配偶関係別構成比の推移を見たものである。未婚者の比率には大きな変動はないが,離別者の比率が上昇傾向を示しており,長期的に見ると,配偶者を有する者の比率は,昭和48年の42.6%から平成15年の22.7%へと低下している。
5-3-2-10図 新受刑者の配偶関係別構成比の推移 (11) 教育程度 5-3-2-11図は,昭和48年以降における新受刑者の教育程度別の構成比の推移を見たものである。教育程度「中学校」の比率が低下する一方,「高校」及び「大学」の比率が上昇しており,統計上は,高学歴化の傾向がうかがわれる。
5-3-2-11図 新受刑者の教育程度別構成比の推移 (12) 小括 以上,新受刑者につき,「平穏な時代」を代表する昭和48年から現在に至るまでの変化を概観したが,高齢化,外国人の増加及び多国籍化,覚せい剤受刑者の増加,女子の増加,初入者の増加などが見られ,近年の傾向として,単に受刑者が増加しているのみならず,質的に変化しているということができる。次項以下では,増加が著しく,かつ,処遇上様々な課題を伴う高齢受刑者,外国人受刑者及び覚せい剤受刑者について,更に取り上げることとする。
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