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 平成16年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/2 

2 外国人による犯罪の動向

(1) 概況

 1-2-2-1図は,昭和55年以降の外国人による一般刑法犯(道路上の交通事故に係る危険運転致死傷を除く。以下,本項において同じ。)の検挙件数及び検挙人員の推移を見たものである。

1-2-2-1図 外国人による一般刑法犯の検挙件数・検挙人員の推移

 検挙件数は,平成11年をピークに2年連続して減少したが,14年から再び増加に転じ,15年は過去最多の3万7,535件であった。また,検挙人員は,平成11年から増加を続けており,15年は昭和55年以降最多の1万4,527人となった。平成15年における一般刑法犯の検挙人員総数は37万9,602人であり,そのうち外国人の占める比率は前年と同じく3.8%であった。
 1-2-2-2図は,昭和55年以降の外国人による一般刑法犯の検挙件数及び検挙人員を,来日外国人とその他の外国人の別に見たものである。ここで,「来日外国人」とは,警察庁の統計の定義により,我が国にいる外国人のうち,いわゆる定着居住者(永住権を有する者等),在日米軍関係者及び在留資格不明の者以外の者をいう(以下,本項において同じ。)。
 来日外国人による一般刑法犯の検挙件数及び検挙人員は,昭和55年以降増加傾向にあり,検挙人員において平成3年から,また,検挙件数において5年から,来日外国人がその他の外国人を超えている。15年を見ると,来日外国人による一般刑法犯の検挙件数は前年より3,000件(12.4%)増加して2万7,258件,検挙人員は前年より1,035人(13.5%)増加して8,725人であり,いずれも昭和55年以降最多となった。

1-2-2-2図 外国人による一般刑法犯の検挙件数・検挙人員の推移(来日・その他別)

 1-2-2-3図は,昭和55年以降の外国人による特別法犯(交通関係法令違反その他の交通法令違反を除く。)の送致件数及び送致人員の推移を,来日外国人とその他の外国人の別に見たものである。
 その他の外国人の送致件数及び送致人員が平成2年まで減少を続け,その後,おおむね横ばいで推移しているのに対し,来日外国人は,送致件数及び送致人員ともに増加傾向にあり,同年以降はその他の外国人を逆転している。15年を見ると,来日外国人による特別法犯の送致件数は前年より2,869件(27.4%)増加して1万3,357件,送致人員は前年より2,760人(32.4%)増加して1万1,282人であり,いずれも昭和55年以降最多となった。

1-2-2-3図 外国人による特別法犯の送致件数・送致人員の推移(来日・その他別)

(2) 主要罪名別動向

 ここでは,来日外国人による犯罪のうち,主要な罪名について,その動向を見ることとする。
 1-2-2-4図[1]は,来日外国人による窃盗について,最近10年間における検挙件数の推移を見たものである。
 窃盗は,増加傾向が続いた後,平成11年をピークに2年連続して減少したが,14年から再び増加に転じ,15年は前年より2,226件(10.8%)増加して過去最多の2万2,830件であった。手口別に見ると,乗物盗はここ数年比較的件数が少なく,非侵入盗は年次ごとの増減が激しいのに対して,侵入盗は,増加傾向が目立ち,15年は前年より1,728件(25.6%)増加して8,482件となった。
 1-2-2-4図[2]は,来日外国人による強盗について,最近10年間における検挙件数の推移を見たものであり,平成15年の検挙件数は過去最多の255件であった。

1-2-2-4図 来日外国人による事件の主要罪名別検挙件数の推移

 1-2-2-4図[3]は,来日外国人による入管法違反について,最近10年間における検挙件数の推移を見たものである。
 入管法違反の検挙件数は,平成9年をピークに一時減少したが,13年からは再び増加に転じ,15年は前年より2,560件(32.0%)増加して過去最多の1万550件となった。15年を違反態様別に見ると,不法残留が5,818件で最も多く,以下,不法在留2,638件,「旅券不携帯・提示拒否」1,266件,「不法入国・上陸」423件の順になっている。11年の入管法改正(12年2月施行)により新設された不法在留罪による検挙件数は,12年は296件であったが,毎年増加し続け,15年は2,638件となった(警察庁刑事局の資料による。)。
 また,警察又は海上保安庁が検挙した集団密航事件の検挙人員は,平成7年324人,8年679人,9年1,360人と急増した後,減少に転じ,15年は139人であった(警察庁刑事局の資料による。)。これは,いわゆる「蛇頭」等の国際的な密航請負組織が関与する集団密航事件の激増に対応するため,9年5月の入管法改正(同月施行)により,集団密航に係る罪等が新設され,集団密航を助長・援助する者等に対する取締りが強化されたことによるものと考えられる。集団密航に係る罪等による送致人員は,10年の153人をピークに12年以降は二桁で推移し,15年は63人であった(警察庁の統計による。)。
 なお,不法滞在者等を減少させるため,平成16年に入管法が改正され,罰則の強化等の措置が講ぜられた(同年12月施行)。
 1-2-2-4図[4]は,来日外国人による薬物関係法令違反及び売春防止法違反について,最近10年間における検挙件数の推移を見たものである。
 薬物関係法令違反の検挙件数は,平成7年以降1,000件を超える状態が続いており,15年は1,266件であった。また,同年における来日外国人による売春防止法違反の検挙件数は263件であった。