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 平成16年版 犯罪白書 第5編/第2章/第2節/1 

第2節 成人に対する更生保護の発展

1 昭和20年代における基本法の整備

 現在の更生保護制度の出発点となったのは,昭和24年に制定された犯罪者予防更生法(昭和24年法律第142号)である。同法律は,「犯罪をした者の改善及び更生を助け,恩赦の適正な運用を図り,仮釈放その他の関係事項の管理について公正妥当な制度を定め,犯罪予防の活動を助長し,もって,社会を保護し,個人及び公共の福祉を増進すること」を目的とするものであり,新憲法の理念の下,仮釈放の審理機関として,地方成人・少年保護委員会(現在の地方更生保護委員会)を設けるとともに,仮釈放者に対しては,保護観察機関による保護観察を実施することとした。
 戦前においては,少年に対する保護観察のほかは,一時,思想犯に対する保護観察が行われたにとどまり,成人に対する一般的な保護観察の制度はなく,また,仮出獄者に対しては,保護観察ではなく,警察官署による監督が行われていた。犯罪者予防更生法は,成人犯罪者一般を対象に,改善更生の支援を目的とする保護観察の制度を新設した点で,制度を一新するものであった。
 犯罪者予防更生法制定時に議論されながら実現しなかった執行猶予者に対する保護観察は,その後,昭和28年及び29年の刑法改正によって導入されることとなり,これを実施するため,29年に,執行猶予者保護観察法(昭和29年法律第58号)が成立・施行された。執行猶予者に対する保護観察は,一般遵守事項が法定されているのみで仮出獄者におけるような特別遵守事項がなく,また,一般遵守事項も,より緩和された内容となっている。このように,成人犯罪者に対する保護観察は,沿革的にも内容的にも仮出獄者と執行猶予者の2本立てで整備された点に特徴がある。
 以上のほか,昭和25年には,更生緊急保護法(昭和25年法律第203号)及び保護司法(昭和25年法律第204号)が制定された。前者は,保護観察の対象とならない満期釈放者や起訴猶予者等に対して,本人の申出によって一定の保護を行うことなどを可能とするもの,後者は,保護観察の実行その他に当たる保護司について,定数,委嘱及び解嘱の手続,任期等を定めるものであり,これら一連の立法によって現行の更生保護の枠組みがほぼ整うこととなった。