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 平成16年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節/5 

5 行刑運営の改善,犯罪情勢の変化,行刑改革会議提言(平成初期〜現在)

 以上のような状況を受け,法務省は,被収容者の処遇を含む行刑運営の在り方にかかわる問題のうち,現行監獄法の下で実現可能なものについては,これを逐次実施することとし,平成2年以降行刑運営の改善策を実施に移した。その主要なものとして,被収容者の健康管理に関する通達(3年),刑務官の職務に関する訓令(3年),懲罰の手続に関する訓令(4年),釈放前指導等に関する訓令(6年),刑執行開始時の指導及び訓練に関する訓令(6年),被収容者の領置物の管理に関する規則(9年),被収容者に係る物品の給与,貸与,自弁等に関する規則(14年)が挙げられる。
 このように,様々な改善措置が講ぜられる一方,犯罪情勢は,平成7年ころから,それまでと異なる様相を見せ始めた。7年には,地下鉄サリン事件を始めとするオウム真理教関係者による前代未聞の事件が発生しているが,このころから一般刑法犯認知件数は増加の度を強め,また,体感治安の悪化が指摘されるようになった。一般刑法犯認知件数は,平成8年から14年まで7年連続して戦後最多を更新し,それとともに刑務所人口も急増し,平成7年に79.0%だった既決の収容率は,12年には100%を超え,15年年末現在では116.6%に達した。
 他方,平成14年から15年にかけて,名古屋刑務所における一連の受刑者死傷事案が明らかとなり,刑務所の運営に対する国民の信頼を大きく揺るがすこととなった。法務省では,再発防止策の検討・策定に取り組む一方,15年3月からは,法務大臣が委嘱した有識者から成る行刑改革会議が開催され,同年12月22日,同会議から,行刑改革会議提言〜国民に理解され,支えられる刑務所へ〜と題する提言がなされた。
 行刑改革会議提言は,我が国の行刑が一貫して追求してきた「受刑者を一定の場所に拘禁して社会から隔離し,その自由をはく奪するとともに,その改善更生及び円滑な社会復帰を図る」という基本的理念について,「今後の行刑運営においても維持されるべきである。」とした上で,[1]受刑者の人間性を尊重し,真の改善更生と社会復帰を図る,[2]刑務官の過重な負担を軽減する,[3]国民に開かれた行刑を実現するという三つの観点から,監獄法の全面改正を含む行刑運営全般の見直しや改善を求めるものであり,現在,法務省では,ここで示された方向に沿った施策の立案・実施に向けて努力しているところである。