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 平成16年版 犯罪白書 第5編/第2章/第2節/2 

2 更生保護の発展

 我が国における保護観察は,保護観察官と保護司との協働態勢によって実施される点に特色がある。保護観察官は,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識をもって保護観察に携わる常勤の国家公務員であり,保護司は,身分上は非常勤の国家公務員であるが,その実質は民間篤志家であって,その地域性・民間性をいかした指導監督及び補導援護を行っている。この両者による協働態勢は,保護観察官の専門性と保護司の地域性・民間性を組み合わせることにより,一方のみでは得られない処遇効果を実現しようとするものである。
 これに関連し,昭和46年には,保護観察官の専門性をより効率的に発揮させるという観点から,処遇の困難性に応じて保護観察対象者をA,Bの2種類に分類し,保護観察官による直接的関与の度合いに変化を持たせる分類処遇制度が導入された。
 また,処遇内容を多様化させることにより効果的な保護観察を行うことを目的として,長期刑仮出獄者に対する中間処遇制度(長期間服役した後に仮出獄になった者が円滑に社会復帰できるよう,一定期間,更生保護施設に居住させて,社会適応訓練を中心とした処遇を行うもの。昭和54年に導入。),類型別処遇制度(保護観察対象者の持つ問題性やその他の特性を類型化して把握し,各類型に応じた効率的な処遇を展開することを目的とするもの。平成2年に導入。),覚せい剤事犯者に対する簡易尿検査(覚せい剤取締法違反によって服役・仮出獄した者に対し,本人の断薬努力を支援するため,その自発的意思を前提に簡易尿検査を実施するもの。平成16年に導入。)などの諸施策が実施されている。
 仮出獄の運用面では,昭和59年に,仮出獄の適正かつ積極的な運用の施策が開始されている。これは仮出獄の要件を満たす者については,できるだけこれを許して更生の機会を与えるとともに,社会内処遇の効果を期する上で必要な保護観察期間を確保するため,仮出獄期間の相応の伸長を図ろうとするものである。
 以上のほか,最近における主要な立法としては,更生保護事業法(平成7年法律第86号)の制定及び更生緊急保護法の廃止(平成8年)が挙げられる。それまでの更生保護施設は「更生保護会」と呼ばれ,その運営母体のほとんどは民法上の公益法人であったが,更生保護事業法の施行に伴い,社会福祉法人と同等の法的地位を有する更生保護法人に組織変更された。また,これと併せて更生緊急保護法が廃止され,同法律の更生保護の措置に関する規定は,犯罪者予防更生法に置かれることとなった。さらに,平成14年には,更生保護施設を積極的に処遇の場として位置付けることなどを内容とする更生保護事業法の改正が行われている。