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 平成16年版 犯罪白書 第3編/第1章/第2節/2 

2 調査結果

 調査対象者のうち,個人及び世帯を単位とした犯罪被害について回答が得られた者は2,086人で,その内訳は,男982人(47.1%),女1,104人(52.9%)で,回答率は69.5%であった。

(1) 対象罪種の分類

 今回調査では,犯罪被害を世帯犯罪被害と個人犯罪被害に分けて調査している。
 世帯犯罪被害は,世帯単位での犯罪被害の有無を調査するもので,例えば「あなたは,又はあなたの世帯では,自転車を盗まれたことがありましたか。」という聞き方をしており,調査対象罪種は,自動車盗,車上盗,自動車損壊,バイク盗,自転車盗,不法侵入及び不法侵入未遂である。
 他方,個人犯罪被害は,個人単位での犯罪被害の有無を調査するもので,例えば「あなたは,恐喝の被害に遭ったことがありましたか。」という聞き方をしており,調査対象罪種は,強盗(未遂を含む。以下,本節において同じ。),恐喝,ひったくり,窃盗,暴行・脅迫及び性的暴行である。

(2) 犯罪被害の実態

ア 罪種別被害率

 3-1-2-1図は,世帯犯罪被害及び個人犯罪被害のそれぞれについて,過去5年間(調査実施時点以前の5年間をいう。以下,本節において同じ。)及び平成15年中に,それぞれ1回以上犯罪被害に遭った比率(以下,本節において「被害率」という。)を罪種別に示したものである。
 被害率は,世帯犯罪被害の中では,自転車盗が最も高く,自動車損壊,バイク盗が続いている。一方,個人犯罪被害は,全般的に低いといえる。
 世帯犯罪被害及び個人犯罪被害の13罪種のうち,いずれかの被害に遭った者の比率は,過去5年間では全回答者の37.4%であり,平成15年1年間では12.2%であった。

3-1-2-1図 罪種別過去5年間・平成15年の被害率

イ 罪種別申告率

 3-1-2-2図は,世帯犯罪被害及び個人犯罪被害のそれぞれについて,過去5年間にこれらの犯罪被害に遭った世帯及び個人につき,直近の被害を捜査機関に届けた比率(以下,本節において「申告率」という。)を罪種別に示したものである。
 世帯犯罪被害の中では,自動車盗,バイク盗,車上盗及び不法侵入の申告率は60%を超えているが,自動車損壊及び不法侵入未遂の申告率は25%を下回っており,罪種による申告率の差が大きい。自動車損壊及び不法侵入未遂の被害を申告しなかった理由は,両罪とも「それほど重大ではない」が最も多く,それぞれ62.6%,77.1%であった。
 個人犯罪被害では,申告率が50%を下回る罪種が多い中で,ひったくりの申告率が高く,被害を申告した理由としては,「盗まれたものを取り戻すため」が92.3%と最も多い。
 一方,強盗の申告率は,かなり低いが,その内訳を見ると,過去5年間に強盗の被害に遭った者7人のうち,2人のみが申告し,3人が不申告,2人が「わからない」と回答している。不申告の3人のうち,実際に現金や物を奪い取られる被害に遭ったのは1人であり,申告しなかった理由として,犯人の「名前を知っていた」及び「家族が解決した」を挙げている。また,不申告の他の2人は,現金や物を奪われておらず,被害が「それほど重大ではない」ことを理由に申告をしていない。

3-1-2-2図 罪種別被害申告率

(3) 罪種別犯罪被害の経年比較

 今回調査の結果を,12年調査及び平成元年に財団法人都市防犯研究センターが実施した同種調査(以下「元年調査」という。)の結果と比較する。元年調査が調査方法として留置法(調査員が調査対象者に質問紙を配布し,後日,質問紙を回収する方法)を用いていること,同じ罪種でも各調査によって質問の表現が同一ではないことなどから,正確な比較は困難であるが,各調査時点での犯罪被害に関する数値を経年で比較することは,暗数を含めた犯罪被害の動向を概括的に把握する上で有益であると考える。
 3-1-2-3表は,過去5年間の罪種別被害率・申告率の経年比較を見たものである。
 世帯犯罪被害では,自動車盗,車上盗,自動車損壊,バイク盗,自転車盗,不法侵入及び不法侵入未遂の7罪種すべてについて比較した。自動車盗の世帯犯罪被害率が,いずれの調査時点においても1%未満と極めて低い水準で推移している以外,ほとんどの罪種で,元年調査と比較して12年調査及び今回調査において世帯犯罪被害率が上昇している。12年調査と今回調査を比較すると,低下した罪種が多く,中でも自転車盗の低下が目立つ。
 一方,世帯犯罪被害の申告率については,元年調査と比較して12年調査では低下した罪種が多かったが,今回調査では12年調査よりも申告率が上昇した罪種が多かった。特に,自動車盗,車上盗及び自転車盗の申告率の上昇が目立っている。
 個人犯罪被害では,強盗,窃盗,暴行・脅迫及び性的暴行の4罪種を比較した。いずれの罪種でも,被害率はかなり低い数値で推移しているが,12年調査と今回調査を比較すると,ほぼ横ばいか,わずかに低下している。ただし,今回調査では,12年調査では質問項目としていない恐喝及びひったくりを追加したため,12年調査で強盗又は窃盗のいずれかとされた被害の中には,今回調査の恐喝又はひったくりに該当するものもあると考えられ,そのため今回調査の強盗及び窃盗の被害率が12年調査のそれよりも低くなった可能性があり,12年調査と今回調査における強盗と窃盗の被害率を単純に比較することはできない。なお,12年調査において,強盗又は窃盗のいずれかの被害に遭った比率は3.2%であるのに対して,今回調査において,強盗,恐喝,ひったくり又は窃盗のいずれかの被害に遭った比率は3.7%であった。
 また,暴行・脅迫の申告率が,12年調査と比較して今回調査では大きく上昇している。

3-1-2-3表 罪種別被害率・被害申告率(過去5年間)の経年比較