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 平成16年版 犯罪白書 第1編/第1章/第3節/3 

3 交通犯罪者の処遇

(1) 検察庁における処理状況

 1-1-3-9図は,交通事件(危険運転致死傷,交通関係業過及び道交違反)及び一般事件(交通事件を除く刑法犯及び特別法犯)について,平成15年における検察庁の終局処理人員の処理区分別構成比を比較したものである。交通関係業過は,一般事件と比べて起訴の比率及び公判請求の比率が共に低いのに対し,危険運転致死傷は,不起訴がわずか1.6%であり,約9割が公判請求され,その余は家庭裁判所送致である。また,道交違反は,略式命令請求の比率が非常に高く,不起訴の比率は低い。

1-1-3-9図 交通事件の検察庁終局処理人員の処理区分別構成比

 1-1-3-10図は,平成15年に危険運転致死傷により公判請求された人員について,事故態様別に構成比を示したものである。致傷においては,飲酒等影響が53.3%と最も多く,赤信号無視が40.1%と続き,この二つで9割以上を占めている。一方,致死においては,赤信号無視が35.0%で最も多く,以下,飲酒等影響が33.3%,高速度等が31.7%の順となっている。

1-1-3-10図 危険運転致死傷の公判請求人員の態様別構成比

(2) 裁判所における処理状況

 1-1-3-11図は,危険運転致死傷,業過(交通関係業過以外の業過を含む。以下,本節において同じ。)及び道交違反について,平成15年に通常第一審において懲役又は禁錮の言渡しを受けた者について,その言渡し刑期を見たものである。懲役又は禁錮の言渡しを受けた者のうち実刑に処せられた者の比率は,危険運転致死傷では36.8%,業過では13.5%,道交違反では24.8%である。そして,危険運転致死傷によって実刑に処せられた者121人のうち,5年を超える懲役の言渡しを受けた者は20人(16.5%)であり,そのうち10年を超える懲役の言渡しを受けた者は3人である。
 なお,平成15年に,業過により,通常第一審において罰金の言渡しを受けた者は229人,略式手続により罰金に処せられた者は9万1,712人である。一方,道交違反により,通常第一審において罰金の言渡しを受けた者は555人,略式手続で罰金に処せられた者は64万6,983人である(司法統計年報による。)。

1-1-3-11図 危険運転致死傷・業過・道交違反の通常第一審における言渡し刑期別構成比

(3) 交通犯罪者に対する矯正及び保護

 1-1-3-12表は,最近10年間における交通事犯(罪名が危険運転致死傷,業過及び道路交通法違反であるものをいう。以下,本節において同じ。)による新受刑者数の推移を見たものである。交通事犯新受刑者数は,平成10年から増加に転じ,15年は前年比4.1%増の3,140人となった。
 交通事犯受刑者のうち,開放的処遇が適当と判断された成人で,[1]交通事犯以外の犯罪による懲役刑を併有しないこと,[2]交通事犯以外の犯罪による受刑歴がないこと,[3]刑期がおおむね3月以上であること,及び[4]心身に著しい障害がないことの諸条件を満たす場合,市原刑務所等の指定施設に集めて収容し,原則として,居房,食堂,工場等を施錠せず,行刑区域内では戒護者を付けることなく,生活指導,教科指導,職業訓練,交通安全教育など社会復帰に必要な処遇が実施されている。

1-1-3-12表 交通事犯新受刑者の罪名・刑期別人員

 少年院における交通事犯による新入院者は,平成11年から増加に転じていたところ,15年は,危険運転致死傷による新入院者が3人と前年より1人増加したものの,業過は73人で前年より25人減少し,道路交通法違反は665人で前年より40人減少している(矯正統計年報による。)。
 一方,更生保護においては,交通事犯保護観察対象者の処遇が大きな割合を占めている。平成15年の新規保護観察対象者全体のうち交通事犯保護観察対象者は41.3%であり,特に保護観察処分少年のうち交通事犯少年は60.0%を占めている。1-1-3-13図は,最近10年間における交通事犯による保護観察対象者の新規受理人員を保護観察の種類別に見たものである。保護観察処分少年は減少傾向にあり,保護観察付き執行猶予者も漸減傾向にある一方,仮出獄者及び少年院仮退院者は,わずかに増加傾向にある。
 交通犯罪者に対する保護観察は,遵法精神のかん養,交通法規等の習得及び環境の調整等を処遇目標として,効率的な実施が図られている。特に交通事犯保護観察処分少年(交通短期保護観察少年を除く。交通短期保護観察制度については第4編第2章第6節参照。)については,保護観察官・保護司による個別処遇に,処遇手引書を用いたカリキュラム処遇の方法が取り入れられている。また,保護観察付き執行猶予者及び仮出獄者に対しては,対象者の家族や職場の人々の理解や協力を求め,環境の改善を図ることや被害者への慰謝・弁償に関して助言することなどの点を重視した指導が行われている。

1-1-3-13図 交通事犯保護観察対象者新規受理人員の推移