前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成16年版 犯罪白書 第1編/第1章/第4節/1 

第4節 薬物犯罪

1 薬物犯罪の動向

(1) 覚せい剤取締法違反

 1-1-4-1図は,昭和26年以降における覚せい剤取締法(昭和26年法律第252号)違反(覚せい剤に係る麻薬特例法違反を含む。以下,本項において同じ。)による検挙人員の推移を見たものである。戦後の混乱期に始まった覚せい剤の乱用は,これまで大きな二つの乱用期を経て現在に至っている。検挙人員を見ると,昭和29年に最初のピークを迎え,5万5,664人の検挙人員を数えたが,その後は急激に減少した。この背景として,29年及び30年の2回にわたる罰則の強化,徹底した検挙,覚せい剤の害悪に関する全国的啓蒙活動の実施等が指摘されている。しかし,45年以降,再び増加に転じ,59年には検挙人員が2万4,372人となり,第2次乱用期を迎えた。その後,平成元年に2万人を割り,6年には1万4,896人まで減少したが,7年以降再び増加傾向を示し,9年及び12年には2万人近くに達し,第3次乱用期を迎えた。しかし,継続的な増加はなく,15年の検挙人員は,前年よりも2,167人(12.8%)減少して1万4,797人となった。

1-1-4-1図 覚せい剤取締法違反の検挙人員の推移

 1-1-4-2表は,最近15年間における覚せい剤取締法違反の検挙人員(警察が検挙したものに限る。)について,違反態様別検挙人員及び営利犯人員の推移を見たものである。平成15年の違反態様別人員では,使用が8,143人(検挙人員総数に占める比率は55.7%)と最も多く,次いで,所持が5,171人(同35.4%)であり,この二つで9割を超えている。「譲渡し・譲受け」の人員は,平成4年に3,000人を割り,10年に2,000人を割り,以降は1,000人台で推移している。
 検挙人員総数に占める営利犯人員の比率は,平成2年に3.0%であったほかは,いずれの年も1〜2%台で推移しており,15年は2.5%であった。同年において,営利犯人員の多い違反態様は,所持(231人),「譲渡し・譲受け」(97人)である。

1-1-4-2表 覚せい剤取締法違反の違反態様別検挙人員

 これらの違反態様別に暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員をいう。以下,本節において同じ。)の動向を見たのが,1-1-4-3表である。検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率は,おおむね40%台で推移しており,平成15年は41.4%(6,050人)であった。暴力団構成員等の占める比率が最も高い違反態様は,いずれの年次も,譲渡し,所持の順であり,暴力団構成員等が密売に深く関与していることがうかがわれる。

1-1-4-3表 覚せい剤取締法違反の違反態様別検挙人員に占める暴力団構成員等の人員

 1-1-4-4図は,過去30年間における覚せい剤取締法違反の年齢層別検挙人員の推移を見たものである。20歳代及び30歳代が多いのが目立つ。昭和52年から59年までは30歳代が最も多く,60年代からは20歳代が最も多かったが,平成14年から再び30歳代が最も多くなっている。20歳未満の少年は,昭和55年から60年までは2,000人を超えていたが,その後,増減を繰り返し,平成15年は528人であった。50歳以上は,昭和57年以降一貫して1,000人を超えており,平成12年及び13年には2,000人を超えたが,15年は前年と同様に2,000人を割り,1,789人となった。

1-1-4-4図 覚せい剤取締法違反の年齢層別検挙人員の推移

 1-1-4-5表は,平成15年における覚せい剤取締法違反の違反態様別検挙人員(警察が検挙したものに限る。)を国籍等別に見たものである。外国人の検挙人員は854人で,全体に占める比率は5.8%である。国籍等別では,韓国・朝鮮が最も多く301人(35.2%),次いで,フィリピン140人(16.4%),イラン112人(13.1%),ブラジル91人(10.7%)の順となっている。国籍等別に違反態様を見ると,韓国・朝鮮及びブラジルは使用が多く(それぞれ53.5%,65.9%),イラン及び中国は所持が多い(それぞれ58.0%,71.4%)のが目立つ。

1-1-4-5表 覚せい剤取締法違反の国籍等・違反態様別検挙人員

 1-1-4-6表は,平成元年以降について,覚せい剤に起因する犯罪,いわゆる二次犯罪による検挙人員の推移を見たものである。平成7年以降9年にかけて増加したが,以後減少し,15年は80人であった。同年における罪名別検挙人員の多いものを見ると,住居侵入,銃刀法違反,窃盗の順になっている。

1-1-4-6表 覚せい剤に起因する犯罪の罪名別検挙人員

(2) 麻薬取締法違反等

 1-1-4-7図は,昭和49年以降における麻薬取締法違反(麻薬・向精神薬に係る麻薬特例法違反を含む。以下,本項において同じ。),あへん法(昭和29年法律第71号)違反(あへんに係る麻薬特例法違反を含む。以下,本項において同じ。)及び大麻取締法(昭和23年法律第124号)違反(大麻に係る麻薬特例法違反を含む。以下,本項において同じ。)の検挙人員の推移を見たものである。
 大麻取締法違反の検挙人員は,起伏を繰り返しながらも長期的には増加し,平成6年には2,103人に達した。その後急激に減少したものの,13年以降再び急速に増加して,15年には2,173人となり,6年当時のピークを上回った。また,麻薬取締法違反の検挙人員は,13年から増加して,15年は530人となり,前年(327人)に比べて62.1%増加した。

1-1-4-7図 麻薬取締法違反等の検挙人員の推移

(3) 毒劇法違反

 1-1-4-8図は,昭和49年以降における毒劇法違反の送致人員の推移を見たものである。送致人員は,50年代後半は3万人台で推移し,57年には3万6,796人のピークを記録したが,その後はおおむね減少し,平成8年以降は1万人を割り,15年は5,546人であった。

1-1-4-8図 毒劇法違反の送致人員の推移