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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第7章/第1節/5 

5 被害の増加と深刻化

 被害者の死傷者数は増加傾向にある。その要因としては,[1]強盗犯に被害者の生命・身体を害することに対する抵抗感が少ないこと,[2]多人数で強引に抵抗を排除するなど犯行自体が荒っぽいこと,[3]被害者が抵抗しているか,あるいは,自転車・バイク等に乗った状態で被害に遭うなど負傷しやすい状況下で犯行がなされていることなどが想定されるが,他方,元来暴力に親和性のある暴力団関係者はもとより,共感性が乏しくエスカレートしやすい少年,生育環境等を異にする来日外国人等が行う荒っぽい強引な強盗が増加していることも,死傷者数の増加に影響を与えているのではないかと思われる。このような荒っぽい強引な犯行の増加傾向は,窃盗のうちの「ひったくり」の増加や重機を使用して現金自動預支払機を奪取する窃盗犯の出現とも相通じる面があり,決して強盗のみに見られる特異な傾向ではないことには注意を要しよう。
 また,被害者の属性に目を向けると,全体的には犯罪者と同様に若年者が多く,20年間の変動を見ると,男性では若年者が,女性では高齢者と未成年者が被害に遭うことが多くなっている。強盗犯罪の主体が男性(93〜96%)であり,被害者との面識がなく,被害者に落ち度がない場合がほとんどであることを考慮すると,男性の強盗犯が,女性・未成年者・高齢者等体力的に劣位に置かれた市民に対し攻撃を加えるという事例が増加していることをも意味している。
 さらに,社会の高齢化・世帯の核家族化・資産の格差拡大を背景として金融資産を有する独居・夫婦のみの高齢者世帯が自宅で被害に遭う例の増加も認められ,特に重大事犯にこの種の事例が少なくないことをも考え併せると,この点の今後の推移には警戒を要するところである。