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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第5章/第2節/1 

第2節 特別調査の結果

1 行為者属性による分析

(1) 年齢層分析

ア 概況

 5―5―2―1図は,行為者(被告人)の犯行時の年齢層を見たものである。
 無期懲役以上の求刑は,事案及び行為者が極めて悪質で矯正が極めて困難な場合にしかなされないため,一般的に可塑性に富み矯正の可能性が残る場合も多い未成年者に無期懲役以上の求刑がなされる事案は少数にとどまるが,20歳代とあわせた若年層として見ると,殺人群で25人,23.6%,強盗群で85人,28.8%という割合になっている。他方,30〜50歳代の中高年の占める割合はいずれも7割弱と高い。

5―5―2―1図 被告人の年齢別構成比

イ エスカレートする若年者

 若年者による重大犯罪を概観すると,一般犯罪の場合と同様,短絡的な動機から凶悪な犯行に及んでしまう事案が散見され,その中にも,特に「エスカレート型犯罪」とでも呼ぶべき一群の犯罪類型が認められた。これは,不良グループを構成する若年者が,取り立てて落ち度のない被害者に対し,ささいなことから因縁を付けて制裁を加えたり金品を要求することなどから始まり,やがて,集団の力を背景に被害者を拉致して長時間(場合によっては長期間)連れ回すなどしつつ,激しい暴行や,拷問ともいうべきリンチを加え,ついには殺害に至るという犯罪類型である。
 今回の調査中,この類型に該当する事案は8件あり,若年者による殺人群22件中3件が,強盗群55件中5件がこの類型に該当した。
 これらの事案において,死刑又は無期懲役求刑の対象となった被告人の人数は全部で16名であり,犯行当時の年齢を見ると,17歳,18歳が各2名,19歳が4名,20歳,21歳が各2名,23歳,24歳が各1名,28歳が2名となっている。また,これら16名の被告人の犯罪歴を見ると,前科前歴(交通関係業過及び道交法違反を除く。)を有する者は10名,そのうち保護処分歴を有する者は6名(うち4名は少年院入院歴あり)となっており,若年であるにもかかわらず,既に複数の犯罪歴を有する者がいる一方,必ずしも重大な犯罪歴のない者であっても,このような重大な犯行に及ぶ場合のあることが認められた。
 これらの事案において殺害された被害者は全部で13名であり,そのうち11名が25歳以下で,被告人らと同様の年齢層となっている。また,被告人らと被害者の面識状況を見ると,友人知人等身近に接していた者が8名,無関係の者が5名であった。
 これらの事案はすべて共犯事件で,単独犯行はなく,共犯の人数は3名から10名であった。また,共犯者の大半は,被告人らと同年代の若年者であり,少年も少なからず含まれている。
 事件の経過について見ると,これらは,当初から殺害を目的としたものではなく,ささいなきっかけで暴行を加えるうち,途中から殺意を生じて殺害するところまで行ってしまうもの,あるいは明確な展望や見通しを持たないまま多人数で執拗に暴行を加えるなどするうち,重傷を負った被害者の処置に困り,犯行隠蔽のために殺害するものがほとんどであり,その経過自体に若年者ゆえの精神的未成熟さがうかがわれる。また,長時間にわたる激しい暴行の末に被害者の生命を奪うにとどまらず,すべての事案において,殺害に至る過程で意図的に相手の苦痛を大きくするような残酷・冷酷な行為が行われていた。そのほか,遊び感覚が作用していると考えられる事例が8件中6件あり,判決においては,行為の残虐性,相手の人間性に対する配慮や苦痛に対する共感性の欠如等が繰り返し指摘されている。
 被害者を殺害した後の行動について見ると,被害者13名中9名について,死体遺棄が行われており(重傷を負った被害者を土中に生き埋めにして殺害したもの1件を含む。),その中には,遺体をバラバラにして遺棄したもの,本州から四国まで運んで遺棄したもの,土中にセメントで埋没したものなどもあった。
 第4章で紹介した強盗少年特別調査においては,強盗少年の場合,共犯者との関係が大きな心理的意味を持つこと,共犯者との関係の中で,犯行がエスカレートする傾向があること(第4章第2節参照)などが示されているが,これら8件の重大事犯の中にも,判決において,「他の共犯者の暴行に刺激され合い,卑怯者・臆病者と見られたくないなどの虚栄心から競い合うようにして暴行を過激化させていった」と指摘されたものを始めとして,若年者あるいは少年に特有の集団心理が作用したと見られる事件が見受けられた。
 以上のほか,これらの重大事犯の中には,暴行が質的にエスカレートしたというにとどまらず,犯行が量的にエスカレートして,複数の被害者を殺害するに至ったケースが認められた。これらは,11日間に4名の生命を奪ったもの(殺人・強盗殺人等),約4ヶ月の間に2名を殺害し,さらに共犯者を口封じのために殺害しようとしたもの(殺人・殺人未遂等),約4ヶ月の間に被害者2名を殺害したもの(殺人等)の3件である。
 これら8件の重大事犯を概観すると,ささいなことが攻撃のきっかけとなっていること,多人数で弱い立場にある者を執拗に攻撃していること,遊び感覚で意図的に苦痛を増大させるような行為が行われていること,卑怯者・臆病者と見られたくないとの心理から加担している場合もあることなど,「いじめ」問題と同様の構図がうかがわれる。
 若年者がこのような犯罪に陥ることのないようにするためには,他人の痛みに思いを致すことのできる共感性,物事の善悪を判断しそれに従うことのできる素朴な正義感,不当な誘いに付和雷同しない判断力等を,早い段階からはぐくむような教育の努力が,家庭内外において必要ではないかと思われる。
 冷酷非情なエスカレート型犯罪の事例
 これらの事案の犯行のきっかけを見ると,言動が気にくわないなどささいなことから因縁を付けたもの,グループ内で弱い立場にある者に対するいじめが発展したもの,誰でも構わないから痛めつけようと考えて,通りがかりの者をねらったものなどがある。
 暴行を加えるに当たっては,手で殴ったり足で蹴ったりするだけでなく,金属バット,金属パイプ,木刀,角材など,相手を殴打するための鈍器がほとんどの事例で用いられており,そのほか,リンチを加えるに当たっては,ライター,火のついたタバコ,熱湯,ナイフ,のこぎり,アイスピック,画鋲等が用いられ,性的陵辱の加えられている事例も複数認められた。
 また,量的エスカレートという点について見ると,共犯者同士で,「あいつまたやる気やで。」「昨日もやって今日もか。」などと話しながら,更に犯行を重ねた事例,2人目の被害者に対し,「お前は第2弾だ。」などと言いながらリンチを加えて殺害した事例などがあった。

ウ 完全犯罪を志向する中高年

 重大事犯の大半を占める中高年の犯罪者にも,無思慮かつ行き当たりばったりの犯行も認められるが,その一方で,若年者には見られない用意周到な完全犯罪志向の犯罪類型が散見され,完全犯罪とまではいえないにしろ相当に計画的な犯行が多い。
 このような犯行の動静を探るため,まずは,完全犯罪志向あるいは計画的な犯罪であることの指標として,[1]犯意の発現が早期に認められること,[2]共犯の場合には謀議を行っていること,[3]犯行準備を用意周到に行っていること,[4]罪証隠滅が徹底していること,[5]犯行が発覚して検挙されるまでに相当な期間が経過していることという5点を取り上げ,調査対象事件のすべてについて検討してみた。
 まず,犯意の発現時期について,殺人ないし強盗の犯意の発現から第1の犯行着手までの期間について事件ごとに見たのが,5―5―2―2図である。重大事犯を犯している殺人犯や強盗犯についての犯意発現時期が犯行当日であるものが多数を占めているが,前日以前に犯意を発生しているなど明確な計画性が認められるものも相当多数に上り,1月以上前から犯意を抱いていたものが殺人でも強盗でも少なからずいることも注目されるところである。
 次に,犯行の謀議と準備状況について事件ごとに見たのが,5―5―2―3図である。共犯の場合は謀議を行っている場合がほとんどであり,その内容も多岐にわたっており,中には犯行後の隠滅工作や逃走経路まで謀議している事例がある。また,対人殺傷用具の準備では,強盗の場合には,金品強取が第1の目的であることが多いため,緊縛用具が多いが,スタンガンや薬物(昏睡用具等)さらにはガソリン等放火用具を用意している事例も散見される。これに対して解錠用具等の対物用具を用意した事例は殺人ばかりでなく強盗でも少ないが,これは,この種重大事犯は,計画の下に敢行されるだけに施錠等の準備が十分でないところがねらわれていることと,被害者と面識があって室内へ入ってから凶行に及ぶ事例が多いことによるものと思われる。
 それ以外の準備としては,車の用意や指紋を残さないための手袋の準備,顔や服装を隠すための準備が多く,最初から殺害を計画している場合には死体等の運搬や遺棄のための掘削用具まで準備している例がある。
 5―5―2―4図は,罪証隠滅工作の種別について見たものであるが,多くの事例で,犯行用具や被害金品の隠匿・投棄,死体遺棄,血痕・指紋等の犯跡隠ぺい行為が行われている。また,少数ではあるが,犯行使用車両の偽装・解体,犯跡隠滅のための放火,関係者の口封じ・殺害,別の犯人の偽装,アリバイ工作など,悪質あるいは入念な罪証隠滅工作を行った事例が散見される。
 罪証隠滅工作が巧妙に行われると,被害が発覚するのも検挙されるのも遅れることになる。5―5―2―5図は,第1犯行から被告人(主犯格)が強盗ないしは殺人の罪で逮捕されるまでの期間を事件ごとに見たものである。計画性があっても,1月以内で殺人群の64.0%,強盗群の51.2%,6月以内で見ると,殺人群の82.6%,強盗群の80.6%が逮捕されており,重大な事件に対する捜査機関の積極的かつ厳正な取組がうかがわれる。
 他方,1年を超えて検挙を免れているものも少数ながら存在し,殺人群では9.3%(8件),強盗群では12.8%(27件)となっている。これらの中には,事故死を仮装した保険金殺人,職業的な連続強盗ないし強盗強姦,土中に埋没するなどして遺体を巧妙に隠ぺいした殺人・強盗殺人等の事案が含まれる。
 計画性の高い悪質な犯行として,[1]犯意の発現が犯行当日ではない,[2]何らかの対人殺傷用具の準備を行っている,[3]何らかの罪証隠滅を行っている,[4]犯行から逮捕されるまでに1月以上経過しているという4点を満たすものを抽出したところ,殺人で33.0%(30件),強盗で43.7%(97件)であり,これらのうち30〜50歳代の中高年が殺人25件,強盗78件と大半を占めている。その中で,特に犯行が巧妙で罪証隠滅が徹底していたもの,すなわち,完全犯罪を志向していた類型が,殺人群で11件(9件が生命保険金目的,その余は債務免脱目的と暴力団抗争各1件),強盗群で10件あった。少年と異なり,社会経験を経た中高年では主として経済的な利益を得るために周到な計画を立てて殺人や強盗殺人を行う者が少なからずいることがうかがわれる。
生命保険金をねらった完全犯罪志向事例
 金融ブローカー2名が,金融業者からの債権取立てに困惑していた被害者に目をつけ,生命保険金を目的とする殺人を計画し,債権者対策と称して被害者に偽装結婚を了承させ,金で自由に操ることの出来る女性と偽装結婚をさせた上,被害者に成り済まして生命保険契約を締結するとともに,被害者を債務者・偽装結婚相手を保証人とする巨額の債務弁済契約の公正証書を作り,交通事故を偽装して被害者を車でひき殺し殺害したが,生命保険金詐取の前に犯行が発覚して保険金を得ることは出来なかったという事例。この事例以外にも,被害者の困窮につけ込んで支配下においた上,様々な偽装工作を施して殺害するという手口が保険金目的殺人には多く,中には生命保険金目的の殺人に成功して数億円の保険金を得ながら,更に多額の生命保険金詐取をねらって再度保険金殺人を試みた事例もある。

5―5―2―2図 犯行の計画性(犯行発現から第1犯行までの期間)

5―5―2―3図 犯行の事前準備

5―5―2―4図 罪証隠滅工作種別

5―5―2―5図 犯罪から検挙までの期間別構成比

(2) 前科歴を有する者の重大事犯

 5―5―2―6図は,本件対象者の前科歴総数及び同種前科歴の有無について見たものである。前科歴総数で見ると,強盗群では初犯者が5割を超えており,殺人群に比して前科歴総数の多い者の割合が少ない。他方,同種前科歴について見ると,殺傷犯(殺人・傷害・傷害致死)と粗暴犯(恐喝・脅迫・器物損壊・暴行)のいずれかの前科歴のある者の割合は殺人群で31.7%,強盗群で22.3%と殺人群の方が高く,強・窃盗前科歴のある者の割合は殺人群で24.3%,強盗群で27.2%とそれほどの差はない。凶悪犯罪の重大事犯においては,初犯者が相当な割合を占めており,同種前科歴のない者が7割前後含まれていることが分かる。

5―5―2―6図 前科歴総数・同種前科歴の有無別構成比

(3) 暴力団犯罪者等による重大事犯

ア 概況

 5―5―2―7図は,暴力団・暴走族関係者等不良集団への帰属状況及び暴力団等との不良交友について見たものである。暴力団・暴走族関係者は殺人群26人(24.5%),強盗群51人(17.3%),暴力団関係者と交遊がある者は,殺人群30人,強盗群62人であり,暴力団・暴走族が関与した事件は,殺人群18件,強盗群32件であった。

5―5―2―7図 暴力団等との関係

イ 抗争と利益の追求

 本件対象全事件における殺害目的の内訳は,5―5―2―8図,そのうち暴力団・暴走族関係者関与事件における殺害目的の内訳は,5―5―2―9図のとおりである。
 全体では,利欲目的が最も多く,次いで強盗殺人の場合に典型的なように「検挙を免れるため」が多く他は少ない。しかし,暴力団・暴走族関係者関与事件50件中では,報復・怨恨,憤怒・激情,口封じ,暴力団抗争等暴力団特有の目的を有する事件が全体に比して比較的多くなっている。また使用する凶器も,銃砲を利用したものが18件,実際に銃殺したものが17件と全体の大半を占めており(全体では銃器使用25件,銃殺22件),一般社会へも不安を与える高度の危険性を有した事件も少なくない。
 内容を子細に検討すると,暴力団組織の縄張り争い等が背景にある抗争事例は全50件中6件にとどまるのに対して,強盗32件,保険金目的殺人3件と金銭や利益を得る目的の利益追求を目指した類型も相当に多い。中には,暴力団関係者が連続強盗を行ったもの,覚せい剤密売利益を強取したもの,他の暴力団関係者に対する強盗を行った事案すらあり,暴力団の強欲な利益追求振りがうかがわれるところである。
暴力団構成員が暴力団構成員に強盗を行った事例
 暴力団組長が,拒絶された場合にはけん銃で脅迫して金員を強取しようと計画し,配下と共にかつての服役仲間の暴力団幹部に借金の申込みに赴き,脅迫した際,配下の者がけん銃で被害者を射殺した事例。暴力団幹部も金員に窮した場合には他の暴力団幹部にすらけん銃を突き付けてまで現金を強取しようとするということを示すものであり,近時の暴力団関係者らによる強盗の増加も暴力団の従来の資金源の枯渇が一因となっている可能性があるように思われる。

5―5―2―8図 殺害の目的(全事件)

5―5―2―9図 暴力団関係者等関与事件における殺害目的(殺人・強盗合計)

(4) 来日外国人と暴力団の連携

 本件対象者のうち,外国籍を有する者は,5―5―2―10表のとおりであり,殺人群8人(7.5%),強盗群28人(9.5%)と数は少ないものの,不法入国・不法残留の来日外国人がその中でも大きな割合を占めている。また,5―5―2―11図は共犯への外国人加担状況を見たものであるが,外国人のみないしは外国人と日本人の共犯による事案は,26件を数え,うち,強盗・窃盗団を構成する外国人による事件も5件あった。この中には,来日外国人強窃盗団と暴力団が連携して侵入強盗を行い,被害者を死亡させた強盗致死の事例も2例含まれていた。これらの事例においては,外国人集団と暴力団は,事件ごとに協力しあるいは単独で,強窃盗を繰り返している状況がうかがわれた。外国人入国者は増加傾向にあり,我が国の社会の国際化に伴って,今後も来日外国人が増加することが見込まれる。そのような中で,犯罪を繰り返す外国人集団と暴力団という内外の犯罪集団が結合し,死刑又は無期懲役求刑に至るような重大事犯を犯す事例が現れていることは,国際化の負の側面とでも言うべきものであり,我が国の社会秩序及び市民生活の平穏に与える影響も大であるから,今後もその動向に注目する必要がある。

5―5―2―10表 被告人の国籍

5―5―2―11図 外国人加担の有無

来日外国人犯罪集団と暴力団が連携した事例
 日本人暴力団の強窃盗団と不法入国外国人強窃盗団が,共同して強窃盗を繰り返し,うち1件について被害者を死亡させた。あらかじめ情報提供者を使って情報を入手した上,クロロホルム等の薬物・スタンガン・ガムテープ等多種多様な犯行用具を用いて,多額の金品のありそうな家ばかりを計画的に襲っていた。多数回かつ数都県にまたがって犯行に及んでおり,約半年間に総額3億円以上の金品を奪うなど,極めて計画的かつ職業的な犯行であった。

(5) 職業的強盗団等の跳梁

ア 職業的強盗団の暗躍

 5―5―2―12表は,殺人・強盗の事件ごとの実行した犯罪数を見たものである。殺人を行った件数は3件以上が20件と多いが,これは通り魔等同一ないし一連の機会に連続して殺人を行った場合が多く,機会を異にして行ったものは一部である。強盗を行った件数が3件以上のものが26件あるが,これに関しては機会を異にする連続強盗犯が多い。また,強・窃盗を常習的に累行している者の関与事件も29件認められ,常習性の強い職業的グループが存在することがうかがわれる。
 5―5―2―13図は,殺人・強盗の共犯の有無及び数について見たものであるが,共犯率は殺人33.0%,強盗37.2%で,一般の殺人・強盗の共犯率(成人で殺人6.7〜9.6%,強盗15.3〜26.5%)と比較すると相当に高い。これは調査対象になっている死刑・無期懲役求刑事件には,保険金殺人やリンチ事件等悪質な殺人事件を共謀して計画していたグループがあることや,死体を埋没・解体して証拠隠滅を図るなど共犯がいなければ困難な事例が相当数含まれていること,発覚を防止するために強窃盗仲間が共同で犯行を行う,あるいは更に強固な組織を持つ職業的強窃盗団が暗躍した事例が含まれることによるのではないかと思われる。調査対象の強盗の中にも,いわゆる職業的強窃盗団による犯行と認められるものが9件見られた。
 5―5―2―1415図は,共犯加担の経緯と共犯者間の関係について見たものである。強盗については利益分配等利欲目的で共犯に加担しているが,その相互の関係は様々で,職場・仕事関係のつながりが多く,親族同士の結びつきに関しては,配偶者以外は少ない。また,暴力団・暴走族関係,不良外国人等犯罪組織による共犯関係の形成も散見される。これら犯罪組織による共犯関係の形成は,職業的強窃盗団の暗躍につながるもので,その動向を注視する必要がある。

5―5―2―12表 殺人・強盗件数

5―5―2―13図 共犯者の有無及び人数別構成比

5―5―2―14図 共犯加担の経緯

5―5―2―15図 共犯者との関係

けん銃を使用した強盗団の事例
 元暴力団構成員2名が知人と共謀してけん銃を使用した連続金融機関強盗(現金輸送車・質屋も含む。)を行った事例。死者こそいないものの実際にけん銃を発射して強盗殺人未遂5件を犯し,複数の地域をまたに掛けて被害額3億円以上を強取した強盗団であり,著しい社会不安を巻き起こした。

イ 連続強盗強姦犯

 強盗の機会に強姦に及ぶ強盗強姦は最も悪質な犯行の一つであるが,女性の羞恥心につけ込んで検挙を免れる犯行隠ぺいの側面をも併せ持っており,強盗の中では暗数が多い犯罪類型であると考えられる。また,女性の1人暮らしをねらったものが多く,犯行が発覚しにくいために,常習的にこれを繰り返す者がいる。本件調査の対象事例の中にも,前記5―5―2―12表のとおり,23件あり,しかも,強盗強姦を3件以上繰り返す常習者による犯行が9件認められた。これらのうち3件は,殺人,強盗殺人,同致死など被害者の生命を奪う余罪を伴う事案であるが,残り6件については,この種の余罪がないにもかかわらず,極めて悪質な常習者であるとして無期懲役が求刑されており(うち無期懲役となったものが5件),この種連続強盗強姦犯に対する警戒が必要なことを物語っている。
連続強盗強姦犯の事例
 不法残留外国人が,約2年間にわたり独身独居女性ばかりをねらう強盗強姦を多数回行っていた事例。長時間居座って威圧して口封じのために被害者の裸体の写真を撮影するなどし,強盗による収入で生活していたもの。
 この事例のほかに,日本人で睡眠導入剤を悪用して被害者を昏睡状態に陥れて強盗強姦を繰り返していた常習犯の事例も複数ある。