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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第4章/第2節/4 

4 資質の特徴に関する分析

 少年鑑別所では家庭裁判所の行う審判及び保護処分の執行に資するために資質鑑別を行っているが,5―4―2―14図は,鑑別の結果,明らかにされた強盗事犯少年の本件非行にかかわる資質の問題点をまとめたものである。「集団になると気分が高揚して調子に乗る」「大切な人以外の他人への思いやりや想像力に欠ける」「即時的・短絡的に物欲を満たそうとする」がそれぞれ7割を超え,「自分で考えることなく,周囲の思惑に合わせて振る舞う」も7割近くとなっている。強盗事犯少年の多くが,集団場面では気分のままに行動し慎重な行動選択が困難であること,身近な人以外の立場を考えていないこと,手段を選ばずにその時々の物欲を満たそうとする傾向を有することがうかがえる。また,暴力にかかわる問題点として,「暴力を振るうことに抵抗感がない」と判断される者の割合も5割近くになっている。ただし,「攻撃性が強く,人に暴力を加えることに快感を覚える」といった問題点については,「顕著に認められる」は4.7%と極めて少なく,「認められる」を含めても20.2%にとどまっており,暴力に快感を覚えるような著しい攻撃性を有する少年は比較的少ない。

5―4―2―14図 本件非行にかかわる本人の問題点

 また,5―4―2―15図は,本件非行にかかわる問題点のうち被害者の負傷程度別で差異があったものを示したものである。被害者の負傷程度が進むにつれ,暴力を振るうことにかかわる問題点を有する割合が高まる様子がうかがえ,特に「暴力を振るうことで,不全感や劣等感を補償したり,自己の存在感を示そうとする」者の割合は,「顕著に認められる」「認められる」を併せて,「負傷なし」で32.8%,「軽傷」で44.4%,「重傷・死亡」で52.4%と顕著に増えている。一方,「攻撃性が強く,人に暴力を加えることに快感を覚える」者の割合は,重傷を負わせたり死亡させている者の中でも2割強程度にとどまっている。加えて,「集団になると気分が高揚して調子に乗る」といった問題点も,被害者の負傷程度にかかわっていることが示されている。共犯と一緒に高揚した気分となり調子に乗ってしまった結果,犯行がエスカレートして被害者の負傷程度がより進んでしまうといった少年による強盗事犯の実態がうかがわれる。

5―4―2―15図 被害者の負傷程度別で差異があった本件非行にかかわる本人の問題点

 このほか,犯行時の最関心事と少年の資質の問題点との関係を分析すると,最関心事を「共犯者との関係」とする者の場合,集団場面では気分のままに行動し慎重な行動選択が困難であることや他者との関係の持ち方について問題性を有する者の割合が高いものの,その他の問題については,比較的低い水準にとどまっていること,最関心事を「被害者への威嚇・暴力」とする者の場合,暴力を振るうことへの親和性を有する者の割合が高いことに加え,身近な人以外の立場を考えない者の割合も高くなっていること,最関心事を「金品奪取」とする者の場合,金銭感覚がルーズでその時々で物欲を満たそうとする者の割合が高いことに加えて,身近な人以外の立場を考えない者の割合も高くなっているが,暴力への親和性を有する者の割合は低いなどの結果が得られた。
 なお,強盗事犯少年の審判結果は5―4―2―16表に示したとおりであり,約半数が少年院送致となっている。審判結果の分布は,犯行時に主導的に振る舞っているかどうかで差異があり,主導者の場合,少年院送致や検察官送致処分となる割合が高くなっている。審判の結果,各少年はそれぞれが抱える問題点の改善に向け,各処遇機関での処遇を受けることになっているが,その処遇内容については第6章第4節を参照されたい。

5―4―2―16表 犯行主導者別に見た審判の結果