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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第4章/第3節/1 

第3節 最近の強盗事犯少年の問題性

1 問題性の要約

 以上,今回の特別調査の結果から明らかになった最近の強盗事犯少年の問題性を要約すると,次の3点となる。
[1] 最近における少年の強盗事犯は,仲間の話やマスコミ等の報道にヒントを得て,凶悪犯罪である強盗を自らの欲望を満たす手軽な手段ととらえ,遊興費欲しさから短絡的かつ即時的に,遊び仲間同士が集団を形成して夜間路上強盗を敢行し,気分が高揚して調子に乗るなどの集団心理も作用して,暴力がエスカレートし被害者を負傷させるというものが多い。この実態は,強盗にかかわる少年の考え方や行動傾向における特徴を示している。つまり,最近における強盗事犯少年の多くは,暴力に対する抵抗感が乏しく,思考や行動が短絡的であり,大切な人以外の他人への思いやりに欠ける反面,集団場面で慎重に熟慮しながら行動選択ができにくく,その一員として手段を選ばずにその時々の欲望を満たそうとする傾向が強いことがうかがわれ,ここに,その問題性がある。
[2] 強盗事犯少年の家庭の多くは実父母がそろっており,家族間にあからさまな対立関係が生じている割合もさほど多くはなく,表面的には問題がないかのように映るものの,その内実は,放任する保護者が多く,そのため保護者が強盗を犯した我が子の現実に気付いていないなど保護者が適切な指導力を発揮していなかったり,あるいは,家族間の情緒的交流が乏しかったりするなど,家庭機能が十分に働いていない家庭が多いという問題性を指摘できる。
[3] 強盗事犯少年の多くが,社会の一員としての自覚に欠け,将来への明るい展望も有していないという問題性とともに,無職者あるいは学校ないし職場に所属していても学校・職場に適応するに至っていないという社会不適応状況下にある問題性も指摘できる。