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2 動機・手口の着想等に関する分析 強盗とは,暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取することであるが,少年による強盗事犯の場合,金品奪取を目的とする以外に,被害者に暴力を振るうこと自体が主たる関心事であり,そのついでに被害者の金品を奪ったり,あるいは,金品奪取もさることながら共犯者と良好な関係を保とうとして事件に加わったりするなどに見られるように,犯行の場面において本人が最も関心を抱いていたこと(以下,「最関心事」という。)が必ずしも金品奪取に向けられているとは限らない上,その場の雰囲気に任せて何となく犯行に至り,その理由を問われてもはっきりと説明できない少年も見られることは,しばしば経験するところである。
そこで,5―4―2―6図は,「最関心事」が「金品奪取」,「被害者への威嚇・暴力」,「共犯者との関係」,「特になし」のいずれであるかについて,5年対象者と14年対象者を比較したものである。「被害者への威嚇・暴力」については,5年対象者に比べて14年対象者の方が実人員では多くなっているが,割合では低くなっている。一方,「金品奪取」については,5年対象者に比べて14年対象者の割合が高くなっており,実人員で比較してみると,5年対象者の実人員の3.6倍となっている。近年,金品奪取を最関心事として強盗に至る少年が増えているという実態がうかがえる。 5―4―2―6図 犯行時の最関心事 ところで,最関心事が金品奪取であったとしても,その金品奪取が何を目的としたものであるのかは様々であり,また,被害者への威嚇・暴力,共犯者との関係にかかわる動機等,金品奪取以外の動機も混在して犯行を行う場合があるので,動機についてはこれを多角的に見る必要がある。5―4―2―7図は,そのような視点から見た各種動機についての複数回答の結果である。金品奪取にかかわる動機としては,「遊興費欲しさ」の割合が高いほか,「簡単に金品が手に入るのなら欲しい」とする割合が高く,これらは,5年対象者に比べて14年対象者では,実人員のみならず割合においても増加している。必ずしも生活費や借金の返済等差し迫った必要性から金品奪取に至っているわけではないという実態が明らかに示されている。 被害者への威嚇・暴力にかかわる動機としては,「手っ取り早く金品を奪いたい」の割合が高く,5年対象者に比べて14年対象者では,実人員のみならず割合においても増加している。手っ取り早く金品を奪うために安易に暴力を振るっており,このことが窃盗事犯にとどまらずに,近年の強盗事犯の増加に関連する一因となっていると推察できる。 共犯者との関係にかかわる動機として割合が高いのは,「認められたい」「共犯者に誘われてその気になった」である。また,5年対象者に比べて14年対象者では,実人員のみならず割合においても「馬鹿にされたくない」「孤立したくない」「行動を共にしないと仕返しされる」が増加している。被害者に対しては,金品を奪取する対象として暴力まで振るう一方,共犯者との関係には気を配っているという強盗事犯少年のいびつな対人関係がうかがえる。 5―4―2―7図 強盗の各種動機 5―4―2―8図は,共犯の有無別に犯行手口の着想が何に由来するものかを示したものである。共犯を伴う者の場合の着想として割合の高いものは,「友人・先輩・共犯者から聞いた」「同種の犯行に及んだことがある」であり,特に前者については,5年対象者に比べて14年対象者の割合の伸びが著しく,実人員では7倍を超えている。近年,強盗が仲間内で話題になっており,それが話題のみで終わることなく実際に犯行にまで及んでいる実態がうかがえる。一方,単独犯の場合の着想として割合の高いものは,「同種の犯行に及んだことがある」「マスコミ報道や本などにヒントを得た」であり,後者については,5年対象者に比べて14年対象者の割合,実人員がともに多くなっている。近年の単独犯には,マスコミ報道や本などを着想源として強盗に至る者が増えている実態がうかがえる。強盗が仲間内で話題にされたりマスコミ等で取り上げられたりするなど,身近な話題となっていることが,少年にとっては,本来強盗が犯罪の中でも凶悪なものであるとの認識を低下させ,むしろ,手軽に自らの諸欲求を満たすことができる手段と認識されるに至っているのではないかという危惧を抱かざるを得ない。5―4―2―8図 共犯の有無別に犯行手口の着想 |