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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第3章/第6節/6 

6 高齢者への攻撃の社会的背景

(1) 高齢化社会の出現

 凶悪犯罪による高齢者被害件数が増加しているが,その背景事情として社会の高齢化の進行がある。5―3―6―25図は,昭和48年から平成14年までの30年間について10年ごとに未成年者・高齢者(60歳以上ないし65歳以上)・それ以外の各年齢層別人口構成比の推移を見たものである。構成比を見ると,30年間で未成年者(男女計)が31.8%から19.9%に減少する一方で,60歳以上の高齢者(男女計)は11.3%から24.9%へと増加(65歳以上で見ても7.5%から18.5%へ増加)している。

5―3―6―25図 未成年者・高齢者の年齢層別構成比

(2) 高齢者単身(独居)・夫婦のみ世帯の増加

 高齢者の場合,独居ないしは夫婦のみ世帯では,自宅にいながらも強盗の被害に遭う件数が増加しているが,その背景として,高齢者単身(独居)世帯ないしは高齢者夫婦のみの世帯が増加していることが指摘される。5―3―6―26図は,昭和55年から平成12年までの20年間の高齢単身世帯・高齢夫婦のみの世帯(国勢調査による。ここでは65歳以上を高齢とし,夫65歳以上妻60歳以上の夫婦を高齢夫婦としている。)の全世帯に対する構成比の推移を見たものであるが,構成比で見ても,20年間で高齢単身世帯が2.5%から6.5%へと4.0ポイント,高齢夫婦世帯が2.9%から7.8%へと4.9ポイント上昇している。

5―3―6―26図 高齢単身世帯・高齢夫婦世帯比率

(3) その他の背景事情

 強盗が金品目的の犯行である以上,現金あるいは換金性の高い金融資産を多く有する者が被害者として狙われるのは必定である。高齢者世帯が強盗の被害に遭うことが多くなった背景には,不況下にあっても比較的金融資産を多く保有している高齢者世帯が多くなったという事情もある。5―3―6―27図は,年齢層世帯別に金融資産の純貯蓄額(貯蓄現在高から負債現在高を差し引いたもの)の推移を見たものであるが,世帯主が60歳以上の高齢者世帯の金融資産は他の世代に比して多く,また,近年は次第に他の世代,特に40歳代を含む中年以前の世代との格差が拡大する傾向が見られる。このような社会的背景も高齢者世帯が強盗の被害に遭う一つの事情になっていると思われる。

5―3―6―27図 世帯別純貯蓄額の推移(勤労者世帯)