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 平成15年版 犯罪白書 第5編/第3章/第5節/3 

3 外国人凶悪犯の地域的変動

(1) 最近10年間の変動

 5―3―5―6図は,平成5年から14年までの10年間の凶悪犯罪を行い起訴又は起訴猶予処分に付された来日外国人人員を前半5年間と後半5年間で分け,その増減傾向を見たものである。殺人については,東京が突出しているほか,その周辺に集中しており,前半・後半での変化はむしろ減少気味である。強盗については,殺人以上に東京が突出し,全国の40%程度を占めており,そのほかでは東京周辺と静岡・愛知等東海地方と大阪が多い。前半と後半で比較すると,ほとんどの県で増加傾向を示しており,東京は,2.4倍,静岡2.0倍,愛知2.5倍,大阪4.1倍と大幅な増加を示している。また,その他の県でも増加しており,全国に次第に浸透する兆しも見せている。

(2) 国籍及び在留資格との関係

 5―3―5―7図は,来日外国人強盗犯のうち,近年特に数の多い(上位2か国)中国とブラジルの国籍を有する検挙人員について,平成5年から14年の10年間を前半(平成5年から9年)と後半(10年から14年)とで対比して,在留資格有無別かつ県別の増減を見たものである。中国国籍の場合,東京が最も検挙人員が多く,増加数も突出しており,その他神奈川・埼玉等東京周辺と大阪など大都市圏で増加数が多く,在留資格を有しない者が多い。それに対して,ブラジル国籍の場合は,愛知を中心とした東海地方と群馬が増加数が多く,中国国籍とは地理的な増減分布に明らかな違いがある。そして在留資格を有する者が多い。これは,第3節で述べたように,来日外国人中の中国籍強盗犯には不法入国・不法残留等違法状態で大都市圏に居住・活動している者が多く,ブラジル国籍の者には適法な入国・在留資格を有して地方都市に定住する者が多いという社会的背景があるためではないかと思われる。

5―3―5―6図 殺人・強盗 起訴又は起訴猶予の処分に付された都道府県別来日外国人人員

5―3―5―7図 強盗 都道府県別在留資格別来日外国人検挙人員の増減