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1 死亡・負傷被害者の数と比率 死傷を本来の目的とする殺人のみならず,死傷を本来の目的としない強盗においても,被害者の生命・身体が侵害される危険が極めて高い犯罪であるだけに,犯行に伴う死傷被害者数と認知件数当たりの死亡・負傷率を見ることは,犯行自体に死傷者を伴いやすい凶行性を帯びているかを判断する指標となり得る。すなわち,これら凶悪犯罪の悪質性の動向を判断するには,死亡・負傷被害者数と認知件数当たりの死亡率,重傷(全治1か月以上の負傷)率,軽傷率を見る必要がある。なお,単に負傷率とすると,重傷よりも軽傷の割合が極めて高いため,誤解を招くおそれが生ずるので,重傷率と軽傷率に細分することにした。5―2―2―1図は,殺人及び強盗における被害者数と死亡率,重傷率,軽傷率の推移を見たものである。
殺人では,平成7年のオウム真理教信者による地下鉄サリン事件で負傷者が大量に生じたため負傷者が同年のみ突出しているが,それを除けば,死亡者・重傷者・軽傷者とも3年ころまで減少傾向にあり,その後は横ばいないし微増傾向にある。死亡率,重傷率,軽傷率もほぼ横ばいであり,変化はない。 これに対して,強盗では,強盗致傷が平成3年から増加に転じ,8年から顕著な増加傾向を示していることや,強盗致死が8年から増加傾向に転じたことを受けて,負傷者と死亡者がそれぞれの時期から増加傾向を示し,重傷者の数は,7年の94人から14年には335人へと3.5倍を超えるに至っている。また比率で見ると重傷率が上昇傾向にあり,悪質化が次第に進行しつつあるのではないかと危惧されるところである。 5―2―2―1図 殺人・強盗の被害者数及び死傷率の推移 |