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 平成15年版 犯罪白書 第1編/第2章/第5節 

第5節 精神障害者の犯罪

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下,本節において「精神保健福祉法」という。)では,「精神障害者」を,精神分裂病,精神作用物質による急性中毒又はその依存症,知的障害,精神病質その他の精神疾患を有する者をいうと定義している。
 また,刑法は,39条において,[1]心神喪失者の行為は,罰しない,[2]心神耗弱者の行為は,その刑を減軽すると規定している。このため刑事裁判においては,精神の障害によって,自己の行為の是非善悪を弁別する能力を欠くか,又はその能力はあるがこれに従って行動する能力がない者は,心神喪失者として,処罰することはできず,また,このような弁別能力又は弁別に従って行動する能力の著しく低い者は,心神耗弱者として,刑が減軽される。
 ところで,平成15年7月10日,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号)が成立した。同法は,心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った者について,継続的かつ適切な医療及びその確保のために必要な観察・指導を行うことによって,病状の改善及びこれに伴う同様行為の再発防止を図り,本人の社会復帰を促進することを目的とするものである。
 同法は,殺人,強盗,強姦,傷害,放火等の重大な罪に当たる行為を行った者が,[1]不起訴処分において,心神喪失者若しくは心神耗弱者と認められた場合,又は,[2]心神喪失を理由とする無罪の確定裁判若しくは心神耗弱を理由に刑を減軽する確定裁判(実刑判決の場合を除く。)を受けた場合,検察官の申立てにより,裁判官1人と精神保健審判員(精神科医)1人からなる地方裁判所の合議体が,処遇(入院治療又は通院治療)の要否・内容に関する審判を行い,両名の意見の一致により,これを決定することとしている。
 入院決定(医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定)を受けた者は,指定入院医療機関に入院して手厚い専門的な治療を受け,その間,保護観察所は,その者について,退院後の生活環境の調整を行う。また,通院決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた者及び退院を許可された者は,原則として3年間,指定通院医療機関において通院治療を受けるとともに,保護観察所(社会復帰調整官)による精神保健観察に付される。
 同法は,平成15年7月16日に公布されており,一部の規定を除き,公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。