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1 成人矯正の動向 (1) 受刑者の全体的動向 5-4-1-1図は,昭和49年以降平成13年までの,殺人及び暴力的9罪種別の新受刑者数とその構成比の推移を見たものである。新受刑者数は,昭和49年以降,全般に減少傾向を示していたが,平成8年ころから増加に転じている。罪種の中で最も多いのが,傷害で,次いで強盗,恐喝,殺人,強姦,住居侵入の順であるが,9年以降は強盗の増加が注目される。
5-4-1-1図 罪種別新受刑者数及び構成比の推移 最近の強盗検挙人員の増加に伴い,長期の執行刑期を有する新受刑者も増加している。執行刑期8年以上の受刑者をL級に分類して処遇しているが,このL級受刑者の罪名は主として殺人と強盗によって構成されるので,この2つの罪名に焦点をあてて推移を見たのが5-4-1-2図である。殺人に関しては,この10年間にゆるやかに上昇を続け,平成4年に128人であったが13年には194人に増加している。強盗は10年以降急激な増加を示し,4年には43人であったが,13年は125人となり,この10年間に191%(82人)の増加を記録している。5-4-1-2図 殺人及び強盗における新受刑者数(L級)の推移 次に,殺人及び暴力的9罪種について,来日外国人受刑者との関係を見てみる。矯正施設では,日本人と異なる処遇を必要とする外国人について,F級に分類して処遇している。このF級の大多数を占めている来日外国人に関する統計が整備された平成9年以降について,罪種別推移を見たものが5-4-1-3図である。13年の新受刑者では,最も多い罪種が強盗で,次いで殺人,傷害,住居侵入の順となっている。この中で,強盗の増加が著しく,特に11年以降の急増が目立っている。5-4-1-3図 罪種別新受刑者数(来日外国人)の推移 (2) 再入受刑者の動向 殺人及び暴力的9罪種について,新受刑者に占める再入受刑者(行刑施設への入所度数が2度以上に及ぶ者)数の構成比を罪種別に見たものが,5-4-1-4図である。平成8年ころから,再入受刑者の構成比が低下し,その分,初入受刑者が増加し,裾野が拡大していることがうかがわれる。
5-4-1-4図 新受刑者の罪種別再入者率の推移 刑法犯全体と比較すると,殺人,強盗,強姦及び強制わいせつなどの凶悪犯及び性犯罪では再入者の比率が低くなっている。一方,住居侵入,脅迫,暴行,恐喝などは,再入者の比率が高くなっている。5-4-1-5図は,殺人及び暴力的9罪種の再入受刑者について,前刑罪名別構成比を見たものである。再入受刑者の前刑罪名とは,前回服役したときの罪名をいう。 5-4-1-5図 罪種別再入受刑者の前刑罪名別構成比の推移 殺人及び暴力的9罪種の中で,前刑罪名と再入罪名の一致度(前刑罪名と再入罪名が同一である比率)が高い罪種は,傷害,強姦,強制わいせつであり,これらの3罪種は,同一犯罪を繰り返しやすいことが指摘できる。各罪種間相互の親和性の観点から見ると,窃盗と強盗,窃盗と住居侵入,覚せい剤と傷害,覚せい剤と殺人がそれぞれに比較的親和性を有していることがうかがわれる。 |