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 平成14年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節/(8) 

(8) 被害者に対する情報提供

 刑事事件の公判期日における審理は公開の法廷で行われ,被害者は,これを傍聴することができるほか,事件処理結果等が被害者に通知されることや,訴訟記録等の閲覧・謄写が認められることなどにより,被害者に対する情報提供が行われている。
ア 告訴人通知及び被害者等通知制度
 検察官は,告訴のあった事件について,公訴を提起し,又はこれを提起しない処分(不起訴処分)をしたときは,速やかにその旨を告訴人に通知しなければならず,不起訴処分をした場合において,告訴人の請求があるときは,速やかにその理由を告げなければならないとされている。
 さらに,被害者等の一定の者に対し,事件の処理結果や裁判結果等を通知する被害者通知制度が,平成3年以降各地の検察庁に導入されるようになり,11年4月からは,全国的に統一された被害者等通知制度が実施されるに至っている。同制度では,被害者が死亡した事件又はこれに準ずる重大な事件や検察官等が被害者等の取調べ等を実施した事件において,被害者等に対して通知の希望の有無を確認し,被害者等が通知を希望する場合,あるいは被害者等から照会があった場合等に通知を行うものとされている。通知の内容は,事件の処理結果,公判期日及び判決結果等であり,被害者等が希望する場合には,公訴事実の要旨,不起訴理由の骨子,公判経過等を通知することができる。
 平成13年3月1日からは,「被害者等通知制度実施要領」に基づき,被害者等又はその代理人である弁護士や目撃者等が希望する場合において,懲役,禁錮又は拘留の刑の執行終了予定時期,仮出獄又は自由刑の執行終了による釈放及び釈放年月日について通知することができるものとされ,同年10月1日から,更に受刑者の釈放予定時期についても通知することができるものとされた。
 平成12年10月から13年9月までの間においては,目撃者等に対する通知を含めて,事件の処理結果について延べ3万5,188件,公判期日について延べ1万7,355件,刑事裁判の結果について延べ2万96件の通知がなされている。13年10月から14年5月までの間においては,事件の処理結果等について延べ2万5,930件,公判期日等について延べ1万3,547件,裁判結果について延べ1万6,971件の通知がなされており,釈放予定等についても,被害者,目撃者等延べ70人に対して通知がなされている(法務省刑事局の資料による。)。
 警察においても,平成8年7月から,殺人事件等の被害者等に対し,捜査状況等を連絡する「被害者連絡制度」が実施されている。
イ 刑事事件記録の閲覧等
 刑事確定訴訟記録については,原則として閲覧することができるとされている。これに加え,裁判確定前の訴訟記録について,前記犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律により,刑事被告事件の係属する裁判所は,第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において,被害者等から当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があり,正当な理由があって相当と認める場合には,申出をした者に閲覧又は謄写をさせることができるものとされた。
 一方,不起訴記録については原則として非公開とされているが,公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合に開示し得る旨が定められている。近時,被害者の問題に対する社会的関心が高まり,被害者に対する配慮とその保護のために諸方策を講じることが重要な課題となっていることにかんがみ,法務省において,被害者等に対する不起訴記録の開示について,新たな方針が策定された。それによって,被害者等が民事訴訟において被害回復のため損害賠償請求権その他の権利を行使するために必要と認められる場合には,関連事件の捜査又は公判の運営に支障を生じたり,関係者のプライバシーを侵害しない範囲内で,実況見分調書,写真撮影報告書,検視調書等の客観的証拠で,代替性がないか又は代替性がないとまではいえないが弊害が少ないと認められるときは,交通事故以外の事件についても証拠の閲覧又は謄写に応じることとされている。