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 平成14年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/3 

3 暴力団関係者の処遇

(1) 検察庁における処理状況

 1-2-1-5図は,平成4年から13年までの10年間における,暴力団関係者(集団的に又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれのある組織の構成員及びこれに準ずる者をいう。以下,本節3(1)において同じ。)と全終局処理人員の起訴率の推移を示したものである。全終局処理人員については,11年以降,起訴率が低下する傾向を示しているが,暴力団関係者については,7年以降上昇傾向にあり,13年では78.3%となっている。

1-2-1-5図 暴力団関係者の起訴率の推移

 1-2-1-6図は,平成13年における主要罪名別起訴猶予率について,全終局処理人員と暴力団関係者とを対比して見たものである。暴行,自転車競技法,窃盗,競馬法及びと博・富くじ等の罪名では,全終局処理人員の起訴猶予率が暴力団関係者のそれを大きく上回っている。

1-2-1-6図 暴力団関係者の主要罪名別起訴猶予率

(2) 暴力団加入者に対する矯正処遇

ア 暴力団加入者の収容状況
 1-2-1-7図は,最近10年間の各年末における受刑者に占める暴力団加入者(暴力団対策法に定める指定暴力団等に加入している者をいう。以下本節3(2)において同じ。)の比率の推移を見たものである。全受刑者に占める暴力団加入者の比率は,平成6年に上昇したが,その後は一貫して低下し,13年では20.4%となった。

1-2-1-7図 受刑者に占める暴力団加入者の比率の推移

 なお,平成13年における新受刑者中に占める暴力団加入者の数は,3,633人(12.8%)であり,その内訳は,幹部1,188人,組員2,000人,地位不明の者445人となっている(矯正統計年報による。)。
イ 新受刑者中の暴力団加入者の特質
(ア)罪名
 1-2-1-8表は,平成13年における新受刑者中の暴力団加入者及び同非加入者の罪名について,構成比の高い順にそれぞれ上位10位までを見たものである。

1-2-1-8表 新受刑者中の暴力団加入者等の罪名別構成比

(イ)刑期
 平成13年における新受刑者中,懲役刑又は禁錮刑を科された暴力団加入者の刑期別構成比を見ると,1年を超え2年以下の者が39.7%で最も高く,以下,2年を超え3年以下の者23.6%,6月を超え1年以下の者12.8%,3年を超え5年以下の者12.7%,5年を超える者7.2%,6月以下の者3.8%の順となっている(矯正統計年報による。)。
(ウ)年齢
 平成13年における新受刑者中の暴力団加入者等の年齢層別構成比を見ると,30歳以上40歳未満の者が37.2%と最も高く,以下,20歳以上30歳未満の者24.5%,40歳以上50歳未満の者19.0%,50歳以上60歳未満の者16.5%,60歳以上の者2.8%,20歳未満の者0.1%の順となっている(矯正統計年報による。)。
(エ)入所度数
 平成13年における新受刑者中の暴力団加入者の入所度数別構成比を見ると,「1度」31.7%,「2度」18.5%,「3度」14.3%,「4度」10.1%,「5度」7.2%,「6〜9度」14.6%,「10度以上」3.6%の順となっている(矯正統計年報による。)。
ウ 矯正施設における処遇
 暴力団加入者の処遇に当たっては,生活指導を強化し,勤労の習慣を身に付けるよう指導するとともに,組織からの離脱指導を積極的に行っている。また,厳正な規律と秩序の維持に格段の注意を払い,必要に応じて,分散して収容したり,他施設への移送を行ったりするなど,保安・警備を厳重にしている。

(3) 暴力組織関係者に対する更生保護

 1-2-1-9図は,保護観察新規受理人員に占める暴力団関係者(保護観察受理時までに暴力団対策法に定める指定暴力団等と交渉があったことが認められる者をいう。)の過去10年間の比率の推移を,保護観察の種類別に見たものである。

1-2-1-9図 保護観察新規受理人員に占める暴力団関係者の比率の推移

 類型別処遇制度(第2編第5章第3節3参照)では,保護観察対象者のうち,[1]現に暴力組織の幹部,組員又は準構成員である者,及び[2]過去に[1]に該当した者で,保護観察開始時においても暴力組織と完全に絶縁しているとは認められない者を,「暴力組織関係対象者」類型に認定することが定められている。この類型に認定された者に対しては,[1]警察等関係機関の協力を得て,本人の生活状況,特に暴力組織との具体的な関係,同組織の動向等の実態把握に努めること,[2]交遊関係の調整,転居等による環境の改善を図るなどして,本人に対し組織からの離脱の働きかけを行うこと,[3]地道な職業への就労指導を行うこと,[4]組織加入の動機,その背景,組織における本人の地位,家庭環境,離脱の難易等を踏まえ,警察等関係機関の協力も得ながら,本人の離脱について組織に働きかけを行うことなどを処遇指針として,処遇を実施することになっている。
用語解説

指定暴力団
指定暴力団等
 暴力団対策法により規制の対象となる団体には,指定暴力団と指定暴力団連合がありますが,暴力団対策法では,両者を合わせて指定暴力団等と呼んでいます。ただし,平成13年12月31日現在で指定を受けている24団体はすべて指定暴力団であり,指定暴力団連合として指定を受けている団体はありません。都道府県公安委員会は,一定の要件に該当する暴力団について,公開による意見聴取を行い,国家公安委員会の確認を求めるなどの所定の手続きを踏まえて,この指定を行います。

中止命令
 暴力団対策法では,所属する指定暴力団等の威力を示して金品等の供与を要求する暴力的要求行為など,従来の刑罰法令には触れない幾つかの行為を禁止しています。都道府県公安委員会は,そのような行為をしている指定暴力団等の暴力団員に対して,その行為の中止を命じ,又はその行為が中止されることを確保するために必要な事項を命じることができるものとされています。この命令が中止命令と呼ばれるもので,中止命令に違反した者は,懲役又は罰金等の刑に処せられます。
 なお,平成9年の一部改正により,指定暴力団等に所属している者以外の者で,指定暴力団等と一定の関係にある者が,指定暴力団等の威力を示して金品等の供与を要求する行為を行うことも,準暴力的要求行為として規制の対象とされ,中止命令の対象に含まれるようになりました。

再発防止命令
 都道府県公安委員会は,指定暴力団等の暴力団員が,暴力団対策法で禁止されている行為をし,更に反復して同様の行為をするおそれがあると認められるときには,一年を超えない範囲で期間を定め,その行為を防止するために必要な事項を命じることができるものとされています。この命令が再発防止命令と呼ばれるもので,これに違反した場合の罰則は,中止命令の場合と同じです。また,平成9年の一部改正により,指定暴力団等と一定の関係にある者による準暴力的要求行為は,再発防止命令の対象にも含まれるようになりました。