前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成14年版 犯罪白書 第1編/第1章/第4節/3 

3 薬物犯罪者の処遇

(1) 検察庁における処理

 1-1-4-10図は,最近20年間の覚せい剤取締法違反,麻薬取締法違反及び大麻取締法違反の起訴率の推移を見たものである。覚せい剤取締法違反は,80%台後半で推移していたが,平成12年に90%を超え,13年は90.2%になった。麻薬取締法違反は,9年以降は一貫して上昇していたが,13年はやや減少し72.3%となっている。大麻取締法違反は,7年以降おおむね上昇傾向にあり,12年には68.2%と最近の20年間で最も高い数値となったが,13年はさらに上昇し71.4%となった(巻末資料1-6参照)。

1-1-4-10図 覚せい剤取締法違反,麻薬取締法違反及び大麻取締法違反の起訴率の推移

(2) 裁判所における処理状況

 1-1-4-11図は,最近20年間に,覚せい剤取締法違反により通常第一審において懲役の言渡しを受けた者について,刑期別有罪人員構成比の推移を見たものである。刑期1年未満の者の比率は,昭和57年には43.5%であったが,その後急激に低下し,平成8年以降は1%を下回っている。これに対し,2年以上3年未満,3年及び3年を超える者の比率は上昇しており,量刑が重くなっている傾向がうかがえる。

1-1-4-11図 覚せい剤取締法違反の刑期別有罪人員構成比の推移

(3) 矯正

 覚せい剤事犯は,行刑施設及び少年院における被収容者の罪名で最も多いものの一つであり,覚せい剤事犯者を収容しているすべての行刑施設及び少年院で,特別の教育プログラムを作成して指導している。指導に関する最近の特徴として,施設の職員だけではなく,外部の専門家も参加する形式となっていることが指摘される。
 1-1-4-12図は,昭和56年以降5年ごとに,覚せい剤事犯受刑者の年齢層別構成比の推移を見たものである。50年代までは,30歳代の比率が最も高かったが,その後は40歳代に移行し,最近は再び30歳代が主流を占めている。また,高齢化が進み,50歳代や60歳以上の年齢層も次第に増加傾向を示している。

1-1-4-12図 覚せい剤事犯新受刑者の年齢層別構成比の推移

(4) 更生保護

 保護観察所においては,類型別処遇の一環として,覚せい剤事犯者の特性に応じて,保護観察官が直接指導を継続する制度を確立し,特別指導を実施している。
 1-1-4-13図は,最近20年間における保護観察新規受理人員に占める薬物事犯者の比率の推移を見たものである。仮出獄者の比率は,昭和57年以降ほぼ一貫して増加したが,平成10年をピークとしたのち減少し13年は28.7%になった。

1-1-4-13図 保護観察新規受理人員に占める薬物事犯保護観察対象者の比率の推移

用語解説

マネー・ローンダリング
 薬物犯罪等による不法な収益に関して,銀行口座を次から次へと移し変えるなどして,あたかも正当な商取引によって得た収益であるかのように仮装することをいいます。

コントロールド・デリバリー
 不法薬物を発見したときに,すぐにその場で押収せずに,監視下に置いて流通させることをいいます。末端の受取人を確定させ,遡って関係者を検挙することを目的としています。
 なお,発見した規制薬物を取り除いて流通させることをクリーン・コントロールド・デリバリーといいます。

没収
 犯罪に関連した物の所有権を国家に帰属させる財産刑のことをいいます。不当な利益を犯人に享受させず,覚せい剤等社会にとって有害な物を除去することが目的です。

追徴
 没収すべき品物の全部又は一部を没収できないときに,それに相当する価額を国家に納付させる処分をいいます。