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 平成14年版 犯罪白書 第1編/第1章/第4節/2 

2 薬物事犯の取締り状況

(1) 覚せい剤等の押収

 1-1-4-6表は,最近20年間における覚せい剤等の押収量を見たものである。覚せい剤等の押収量は,いわば氷山の一角であり,実体と一致しているとは言えないが,薬物に対する需要の動向を示していると考えられる。

1-1-4-6表 覚せい剤・麻薬等の押収量

 覚せい剤(粉末)の押収量は,平成10年までは,数十キログラムないし数百キログラム程度の押収量で推移していたが,平成11年に急増し,同年には約2,000kg,12年には約1,000kg,13年には約420kgが押収されている。
 覚せい剤の1件の押収量が1kg以上である大量押収事犯の件数は,昭和63年以降,増減を繰り返しながら,全体として減少傾向にあったが,平成6年以降増加傾向に転じ,11年は35件,12年は25件,13年は18件である。また,大量押収事犯の1件当たりの平均押収量は,10年以降4年連続して30kgを超えており,中には100kg単位の押収事犯も見られるなど,ここ数年の大型化が著しい。
 検察庁における大麻事犯通常受理人員の増加に伴って,大麻の押収量も増加し,平成11年には最近の20年間における最高である約790kgを記録したが,13年には更に増加し,約995kgとなった。

(2) 覚せい剤の仕出地

 1-1-4-7表は,最近20年間における覚せい剤等の大量押収事犯の仕出地を見たものである。覚せい剤濫用の第2のピークであった昭和59年前後は,韓国及び台湾が大量押収事犯の主たる仕出地であったが,平成5年から中国,9年から北朝鮮を仕出地とするものが見られるようになってきた。

1-1-4-7表 覚せい剤の大量押収事犯の仕出地

(3) 麻薬特例法の運用状況

 平成3年10月5日に,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)が制定され,4年7月から施行されたが,同法では,業として行う不法輸入等の処罰に関する規定,マネー・ローンダリングの処罰に関する規定,薬物犯罪収益の必要的没収・追徴規定,国際的なコントロールド・デリバリーを可能にする規定等が設けられた。
 1-1-4-8表は,平成4年以降の麻薬特例法違反事件数を見たものである。4年から7年までは10件以下であった件数は,8年に25件と急増した後20件台で推移し,13年には21件となっている。

1-1-4-8表 麻薬特例法違反事件の推移

 1-1-4-9表は,麻薬特例法違反の特色の1つである没収追徴規定の適用状況を見たものである。合計金額は,平成9年に1億円を超えて以降,10年が約6億7,000万円,11年が約19億円,12年が約5億4,000万円,13年は,37億8,700万円となっており,薬物犯罪収益を密売組織に保持させないという法の趣旨を生かす適用が効果を上げつつある。

1-1-4-9表 麻薬特例法違反に係る没収・追徴規定の適用状況