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 平成14年版 犯罪白書 第1編/第1章/第3節/1 

第3節 交通犯罪

1 交通犯罪の動向

(1) 交通関係業過

 1-1-3-1図は,昭和21年以降の交通事故の発生件数及び交通事故による死傷者数の推移を示したものである。死亡者数は,平成5年以降減少傾向にある。しかし,交通事故の発生件数は,昭和53年以降増加傾向にあり,平成5年に過去のピークを突破して以降,毎年,過去最高記録を更新し続けている。また,それに伴い負傷者数も増加しており,10年には過去のピークを超え,ここ数年は過去最高記録を更新している(巻末資料1-5参照)。

1-1-3-1図 交通事故の発生件数・死亡者数の推移

 1-1-3-2図は,最近10年間における交通関係業過の検挙人員の推移を示したものである。交通事故の発生件数の増加に伴い,交通関係業過の検挙人員も増加し,平成12年は戦後初の80万人を突破したが,13年も,前年の2.4%増の87万605人となっている。ただし,業務上過失傷害の検挙人員は漸増傾向にあるが,業務上過失致死及び重過失致死等の検挙人員は漸減傾向にある。

1-1-3-2図 交通関係業過の検挙人員の推移

 1-1-3-3図は,いわゆるひき逃げ事件(交通関係業過を伴う事故不申告等)の発生件数及び検挙率の推移を示したものである。発生件数は平成8年以降増加し,特にここ2年間で急増しているが,検挙率は8年以降低下傾向にある。13年の検挙率は,全体で30.3%にまで下がり,重傷事故の検挙率も53.7%にとどまっている。しかし,死亡事故の検挙率は前年を6ポイント上回る93.4%である。

1-1-3-3図 ひき逃げ事件の発生件数・検挙率の推移

(2) 交通関係法令違反

 平成13年における道交違反の取締件数の総数は780万7,868件であり,昭和59年のピーク時の総数1,384万6,532件から,ほぼ連続して減少傾向を示している。1-1-3-4図は13年の道交違反の取締件数を示している。道交違反のうち,交通反則通告制度に基づき反則事件として告知された件数は686万7,396件(取締件数の88.0%)であり,それを違反態様別に見ると,速度超過が最も多く,以下,駐停車違反,一時停止違反と続いている。他方,非反則事件として検察庁に送致された道路交通法違反について違反態様別に見ると,速度超過が最も多く,以下,酒気帯び・酒酔い,無免許の順となっている。送致件数のうち,いわゆる交通三悪とされている飲酒運転(酒気帯び・酒酔い)・無免許運転・速度超過が占める割合は77.4%となっている。

1-1-3-4図 道交違反の取締件数

(3) 危険運転致死傷罪の新設

 平成13年11月28日に制定された刑法の一部を改正する法律(平成13年法律第138号)により,危険運転致死傷罪が新設された(平成13年12月施行)。これまで,交通事故を起こした者に対する法的責任は,道路交通法違反と刑法の業務上過失致死傷罪としてとらえられてきた。しかし,昨今の交通事故の中には,飲酒運転や著しい速度超過など交通ルールを無視した悪質・危険な運転を行った結果,人を死傷させるに至った事案が少なからず含まれている。今回の危険運転致死傷罪の新設は,このような死傷事犯を,暴行による傷害,傷害致死に準じた犯罪として処罰しようとするものである。13年中,同罪が適用されて起訴された事案はなかったが,この新設により交通事故の発生件数が抑止されるかどうかについては,今度の動静が注目される。