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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第5章/第5節/1 

第5節 外国人保護観察対象者に関する実態調査

1 概説

 保護観察対象者のうち国籍が日本以外の者(以下「外国人保護観察対象者」という。)の新規受理人員は,平成6年以降一貫して増加しており,12年は前年比12.6%増の1,588人(「無国籍・不詳」のものを除く。)となっている(保護統計年報による。)。同年末現在では,41か国,1,779人が係属している(法務省保護局の資料による。)。
 これらの外国人保護観察対象者における処遇上の問題点としては,[1]日本語による意思伝達が困難である者が多いこと,[2]通訳人の確保が容易でないこと,[3]成育した社会や文化や制度が違うことから生活習慣や罪悪感,規範意識に差異があること,[4]職場の開拓が困難である者が多いこと,[5]種々のハンディがあるため福祉・医療の援助が得にくいことなどが従来指摘されてきたが,全国的な実態調査及びそれに基づく問題点のより深い分析や対応策の検討がなされた例はない。
 そこで,法務総合研究所では,外国人保護観察対象者の現状及び問題点について,より正確かつ幅広く把握することを目的として,全国の保護観察所の協力を得て,保護観察事件記録に基づく特別調査を実施した。
 調査対象者は,平成9年1月1日から12年6月30日までの間に保護観察を終了した外国人保護観察対象者である。ただし,戦前から日本に在留している韓国・朝鮮人等の特別永住者(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法3条から5条に規定する者)及び退去強制事由に該当するとして,法務省入国管理局所管の入国者収容所に身柄を収容されるなどの理由で,保護観察が実施できなかった者については,調査対象から除かれ,総数で567人が分析の対象となった。
 以下,調査対象者のデータと比較するため,平成9年から11年の全保護観察対象者(交通短期保護観察少年を除く。新規受理13万9,243人,終了13万2,426人。以下「一般群」という。)に関する保護統計年報等のデータを適宜交えて,調査対象者の実態について見ていく。