前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成13年版 犯罪白書 第4編/第5章/第4節/3 

3 まとめ

 調査結果をまとめると以下のとおりである。

(1) 調査対象者の基本的属性等について

 今回調査では,出身地域を見ると,アジア地域(78.5%)及び南アメリカ地域(13.4%)で9割を占めており,国籍別では,中国,イラン,ブラジルの順となっている。国籍数(地域を含む。)は,2年調査での27か国,5年調査での37か国(無国籍を除く。)に対し,今回調査では45か国となっており,経年につれて増加していることが分かる。使用言語数についても,今回調査では35か国語に達している。
 調査時年齢を見ると,2年調査,5年調査と比べ,今回調査では年齢の上昇が認められる。
 在留資格等については,「不法在留」,「不法入国・不法上陸」に当たる者の比率が上昇する傾向がうかがわれる。
 日本語能力については,日常会話及び読み書きとも,「全くできない」とする者の比率は,年々低下する傾向にある。しかし,今回調査で「全くできない」及び「あまりできない」と回答した者の比率は,日常会話については44.5%,読み書きについては68.0%となっており,日本語に対する理解力に欠ける者が依然として多いことがうかがわれる。

(2) F級受刑者の意識について

 本件犯罪について,来日前から考えていたとする者の比率は,2年調査では30.6%,5年調査では22.1%,今回調査では6.9%となっており,急激な低下を示している。
 刑務所生活への適応については,「刑務所の生活に慣れましたか」との質問に「いいえ」と回答した者の比率が,2年調査(55.2%),5年調査(41.8%)と比べ今回調査(65.3%)では上昇している。また,今回調査で,「担当職員の指示が分かりますか」との質問に「いいえ」と回答した者は22.5%となっており,「いらいらすることが,よくありますか」との質問に「はい」と回答した者は61.5%となっている。
 出所後の生活については,出所後もできれば日本で生活したいとする者の比率が,今回調査では30.5%となっているが,この比率は経年につれて上昇している。
 今回調査で新たに追加した項目として,受刑中に再び事件(犯罪)を起こさないための教育(指導)を受けたかを尋ねたところ,受けたとする者の比率は41.9%,受けないとする者は47.8%であった。
 以上,調査結果を要約した。F級受刑者の増加に伴い,受入れ施設の数も増加し,今回調査では4割を超える者が再犯防止のための特別な教育(指導)を受けていることが示されたが,今後は,日本語教育を含め,受入れ施設間の格差を無くし,異国での受刑生活について十分に理解させ,心情安定を図っていく方策が求められる。