第4章 薬物犯罪 薬物犯罪は,乱用者個人の心身をむしばむことはもとより,凶悪事犯を含む二次犯罪の原因となるほか,その密売による利益が暴力団等の犯罪組織の資金源となるなど,社会の健全な発展にとって,大きな阻害要因であることは論をまたない。 我が国の薬物犯罪の状況は,近年,覚せい剤事犯者が増加していることに加え,元来この種犯罪は潜在化傾向が強く,相当の暗数も見込まれることから,薬物犯罪の今後の動向には予断を許さないものがある。また,薬物取引には,暴力団などの犯罪組織が深く関与するものであり,薬物犯罪に対しては,これを組織犯罪として捉え,厳正な対処が求められるところである。 本章では,我が国の薬物犯罪の大部分を占める覚せい剤事犯を中心に,薬物犯罪の動向及び検察,裁判等刑事司法における薬物事犯者の処遇について記述する。
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