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 平成13年版 犯罪白書 第4編/第2章/第4節/1 

1 主要な犯罪

 IV-25図は,1980年から1999年までの20年間について,各国の主要な犯罪の認知件数及び発生率の推移を見たものであり,1980年の数値を100とする指数の推移も併せて示してある(巻末資料IV-14参照)。

IV-25図 5か国における主要な犯罪の認知件数・発生率の推移

 我が国の主要な犯罪の認知件数は,その実数では,他の4か国を大きく下回っている。しかし,前節までに記述したように,我が国の主要な犯罪の認知件数は,既に1980年(昭和55年)の段階で,窃盗が全体をリードする形で増加に転じ,以後増加傾向を強めている。
 これに対し,その他の4か国における主要な犯罪の認知件数は,おおむね減少の方向で推移している。まず最も認知件数が多いアメリカでは,1992年から認知件数は減少傾向に転じ,次第にその傾向が強まっている。ドイツでも,1991年の統一以降,主要な犯罪の認知件数の増加が顕著であったが,1996年以降は,わずかながら減少に転じている。イギリスも1993年から,フランスも1995年から,主要な犯罪の認知件数は,それぞれ減少傾向に転じていたが,いずれも1998年から再度増加した。しかし,1999年における両国の認知件数は,依然としてそれまでの最高値を下回っている。
 その結果,前記の指数により当該20年間の認知件数の増加状況を見ると,1999年における我が国の指数は,159.5であり,イギリス(210.3)及びドイツ(165.2)に次いで高いものとなっている。
 主要な犯罪の発生率を見ても,我が国は,依然として他の4か国を大きく下回っている。しかし,主要な犯罪の認知件数が最も多いアメリカと比較すると,我が国の発生率は,1980年にはアメリカの2割程度であったものが,1999年には同国の4割程度にまで接近してきている。また,発生率の上昇の度合いを前記の指数から見ても,我が国(1999年の指数147.3)は,イギリス(同198.0)に次いで高くなっている。
 IV-26図は,我が国で主要な犯罪(一般刑法犯)の検挙率が急激な低下を始めた1988年(昭和63年)以降において,各国の主要な犯罪に係る検挙率の推移を見たものである(巻末資料IV-16参照)。

IV-26図 5か国における主要な犯罪の検挙率の推移

 我が国の検挙率は,アメリカ,イギリス及びフランスの3か国と対比すると,全期間を通じて,これらの国の検挙率を上回っている。しかし,1989年から,ドイツを下回っており,1995年以降,その差は拡大しつつある。また,これら4か国では,ここ数年の検挙率が,おおむね5ポイント以内の変動にとどまっているのに対し,2000年における我が国の検挙率(23.6%)は,前年比で10.2ポイントも低下しており,1999年におけるイギリス及びフランスの数値を下回っているのみならず,最も検挙率の低いアメリカの数値に近づきつつある(第1編第1章第1節参照)。