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 平成12年版 犯罪白書 第5編/第2章/第3節/2 

2 自動車損害賠償保障制度

 自動車損害賠償保障法は,自動車事故の急激な増加に伴う被害者の保護の万全を期し,自動車損害賠償保障制度を確立するため,昭和30年7月に制定され,同年8月から31年2月にかけて施行された。
 同法は,自動車の運行によって,人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより被害者の保護を図ることなどを目的としており,同法による自動車損害賠償保障制度は,被害者救済制度の一環としてとらえることができる。自動車損害賠償保障制度の中核となっているのは,自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)及び自動車損害賠償責任共済(以下「自賠責共済」という。)である。
 この制度の骨子は,[1]挙証責任を加害者側に転換することにより,自動車の運行供用者に,運行上生じた人身加害についての損害賠償責任を無過失責任に近い形で負わせ,[2]自動車保有者には,損害保険会社との間で自賠責保険契約を締結するか,農業協同組合(同連合会),全国労働者共済生活協同組合連合会グループ又は全国自動車共済協同組合連合会グループ(平成10年4月1日,自賠責共済事業を開始。)との間で自賠責共済契約を締結することを義務づけ,[3]人身事故が発生した場合は,死亡による損害で最高3,000万円,傷害による損害又は死亡に至るまでの傷害による損害で最高120万円,後遺障害による損害で最高3,000万円を,自賠責保険又は自賠責共済から支払うというものである。
 平成10年度(会計年度)中における自賠責保険及び自賠責共済の支払状況は,V-9表のとおりである。

V-9表 自賠責保険・共済支払状況

 さらに,自賠責保険及び自賠責共済を補完するものとして,政府が行っている自動車損害賠償保障事業がある。これは,いわゆるひき逃げや無保険車による事故の場合,自賠責保険や自賠責共済では被害者が救済を受けられないため,政府が被害者に対して損害額をてん補するものであり,そのてん補の額は自賠責保険に準じている。平成10年度(会計年度)の保障事業による保障金の支払状況(ひき逃げ3,293件及び無保険441件)を見ると,支払額は,死亡105人に対し約19億9,600万円,傷害3,629人に対し約20億6,500万円であり,死者一人当たり平均約1,901万円,負傷者一人当たり平均約57万円が支払われている(運輸省自動車交通局の資料による。)。