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 平成12年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節/3 

3 公判

 被害者が証人として,被告人の面前においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認められるときや,特定の傍聴人の面前で充分な供述ができないと認められるときは,被告人や特定の傍聴人を退廷させることができる。また,裁判所が裁判官の全員一致で,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には,対審を非公開とすることができる。さらに,証人の重要性,年齢,職業,健康状態その他の事情と事案の軽重とを考慮し,裁判所外での尋問や公判期日外の証人尋問を行うことができるとされている。また,前記「刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律」により,裁判所は,証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは,適当と認める者を証人の供述中,証人に付き添わせることができるとされたほか,証人が被告人の面前において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されると認める場合には,被告人と証人との間で,一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置(遮へい措置)を採ることができ,また,強姦罪等の被害者等を証人として尋問する場合において,裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所以外の場所に証人を在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話する方法(ビデオリンク方式)によって尋問することができるものとされた。
 このほか,証人尋問における証人保護のため,証人の証明力を争うために必要な事項の尋問であっても,みだりに証人の名誉を害する事項に及んではならず,また,威嚇的又は侮辱的な質問をしてはならないとされている。
 なお,平成11年9月に施行された「刑事訴訟法の一部を改正する法律」により,[1]裁判長が一定の場合に証人等の住居等が特定される事項に関する尋問を制限することができること,[2]証人等の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類等を閲覧する機会を与えるに際しては,検察官又は弁護人は相手方に対し,証人等の住居等が特定される事項が被告人を含む関係者に知られないようにすること,その他証人等の安全が脅かされることがないよう配慮を求めることができることなどを内容とする規定が設けられた。
 一方,従前から,検察官等が被害感情等の記載された供述調書を証拠として公判廷に提出し,あるいは,被害者等を証人として尋問し,被害感情等について証言を求めることを通じて,被害者等の心情,意見が公判廷に示されることも少なくなかったが,前記「刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律」により,被害者等から,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは,裁判所は,公判期日において,その意見を陳述させるものとされた。
 さらに,前記「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」により,刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は,被害者等から,公判手続の傍聴の申出があるときは,申出をした者が傍聴できるよう配慮しなければならないものとされた。