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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第7章/第1節/2 

2 国際犯罪被害調査

 多国間における犯罪被害の実態を正確に比較することを目的とする,標準化された方法による犯罪被害実態調査として,1989年に,オランダ司法省が実施した国際犯罪被害調査(International Crime Victim Survey)がある。この調査は,1992年の第2回からは,オランダ,イギリス及び国連犯罪・司法研究所(UNICRI)の犯罪学者から構成される委員会の監督の下に,オランダ,イギリス,カナダ,国連開発計画(UNDP)等の後援により実施されている。
 ここでは,11の先進国又は地域,13の発展途上国及び20の旧共産圏諸国が参加し,1996年から1997年にかけて実施された第3回国際犯罪被害調査の結果から主要なものを紹介する。
 V-39図は,調査の前年1年間に,世帯単位で不法行為目的侵入及び個人単位で強盗の被害を受けたことのあるものの比率を,旧共産圏を含む六つの地域別に見たものである。不法行為目的侵入の被害では,アフリカが最も高く8.3%,次いでラテンアメリカの5.3%となっており,強盗の被害では,ラテンアメリカが最も高く8.1%,次いでアフリカが4.2%となっている。

V-39図 不法行為目的侵入・強盗の被害率

 V-85表は,世帯単位で自動車盗,不法行為目的侵入及び車上ねらいの被害について,また個人単位で暴行,強盗,すり等の人的財産に対する窃盗及び性的暴行の被害について,それぞれ過去5年間の被害申告率を,地域別に見たものである。罪種別の被害申告率の順位は,各地域間に余り差はないが,いずれの罪種においても,西ヨーロッパ及び北アメリカの被害申告率が他と比べて高くなっている。なお,各地域において被害申告率が最も高い自動車盗及び被害申告率が低い性的暴行で,地域による被害申告率の差が最も小さくなっている。

V-85表 罪種別被害申告率

 V-86表は,過去5年間に経験した不法行為目的侵入及び強盗の被害のうち直近のものについて,被害不申告の理由を尋ねた結果を地域別に見たものである。不法行為目的侵入の被害については,旧共産圏及びアフリカでは「警察は何もできない」の比率が最も高く,ラテンアメリカでは「警察は何もしてくれない」の比率が最も高いが,西ヨーロッパ,北アメリカ及びアジアでは,「被害がそれほど深刻ではない」の比率が最も高くなっている。一方,強盗の被害については,西ヨーロッパでは「被害がそれほど深刻ではない」の比率が,北アメリカでは「自分で解決した」の比率が,それぞれ最も高く,アジアでは「被害がそれほど深刻ではない」と「警察は何もできない」の比率が同率で最も高くなっている。また,旧共産圏及びアフリカでは「警察は何もできない」の比率が,ラテンアメリカでは「警察は何もしてくれない」の比率が,それぞれ最も高くなっている。

V-86表 不法行為目的侵入・強盗の不申告の理由