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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第6章/第2節/6 

6 まとめ

 少年院在院者を対象とする今回の特別調査の結果を,被害・被害者についての認識・意識を中心にまとめると,以下のとおりである。
 [1] ほとんどの者が,自分の与えた被害について認識している。また,被害者に与えた精神的被害については,目に見えないものであるだけに,3割程度のものが「わからない」と答えているが,半数以上の者が「精神的な被害を与えた」と答えており,特に,強姦等では9割近くが「大きな精神的被害を与えた」と答えている。精神的な被害を与えたことを知った状況については,「警察・検察の取調中」を挙げるものが多い。さらに,ほとんどの者が被害者やその家族の生活に種々の゛影響を与えたという意識をもっており,殊に,殺人等及び強姦等の被害の深刻さ,影響の複雑さについて認識している加害少年が多い。
 [2] 全体で7割強のものが,被害者やその家族の実際の気持ちを聞いたことがないと答えているが,被害者の気持ちについて詳しく知りたいと思うものが,知りたいと思わないものを上回っている。また,ほとんどの者が,被害者側から厳しい見方をされているという認識をもっており,被害者等は「自分がいつまでも施設から出てこないことをねがっている」,「一生,自分をにくみつづける」と思っているものも多い。今回の処分についても,かなりのものが,被害者等は「軽すぎると思っている」という認識を有している。
 [3] 今回の事件の責任については,7割を超えるものが「すべて自分に責任がある」と答えており,「被害者も少しは悪いが,大部分は自分に責任がある」とするものも併せると95.0%となる。また,「すべて自分に責任がある」とするものの比率は,殺人等及び傷害では総数での比率を下回っているのに対し,窃盗,強盗及び強姦等では総数での比率を上回っている。
 [4] 被害者やその家族に対しては,総数で9割を超えるものが,申し訳ないと思っていると答えているが,傷害では,この比率が他と比べて低くなり,85.7%となっている。また,事件後の被害者に対する気持ちの変化を尋ねた結果を見ると,申し訳ないという気持ちが前より強くなったとするものの比率が60.2%と最も高くなっているが,その変化のきっかけについては,「施設の職員の面接や指導の中で」を挙げるものが多く,しかも,その比率は,在院期間が長い少年ほど上昇する傾向がうかがえる。
 [5] 実際に被害者に「謝罪した」ものは少数で2割を切るが,謝罪をしていないものの大半が謝罪の意思を表明している。被害者やその家族との示談が成立しているものも含め,示談について何らかの行動を起こしているものは4割弱である。被害者やその家族に「弁償した」とするものは3割弱である。殺人等について見ると,示談が「成立した」及び「弁償した」とするものの比率は,それぞれ総数での比率を下回っているが,「(示談について)交渉中である」,「弁償中である」及び「弁償するつもりはあるが,していない」とするものの比率は,それぞれ総数を上回っている。
 [6] 罪の償いとしては,「社会で更生すること」が重要であるととらえているものが多いが,被害者側とのかかわりの中でとらえる「被害者やその家族の許しを得ること」,「被害者やその家族に謝罪すること」がこれに次いでいる。特に,殺人等では,「社会で更生すること」が重要とするものの比率が,総数での比率を下回り,代わって「被害者やその家族に謝罪すること」を挙げるものの比率が高くなっており,罪の償いを考えるに当たって,被害者側とのかかわりを重く受け止める意識がうかがえる。