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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第6章/第1節/5 

5 被害弁償等

 (1)謝罪
 V-23図は,被害者に対する謝罪の有無について尋ねた結果を罪種別に示したものである。
 総数で見ると,「謝罪した」が36.8%,「謝罪するつもりはあるが,していない」が52.7%であり,一方,「謝罪するつもりはない」は10,5%となっている。罪種別に見ると,「謝罪した」は,業過傷で63.3%と高くなっているほかは,30%から50%である。また,「謝罪するつもりはあるが,していない」とするものは,強盗で最も高く65,4%であり,以下,窃盗(62.1%),強姦等(52.5%)の順となっている。これに対し,「謝罪するつもりはない」と答えた者は,傷害(25.7%)及び恐喝(23.3%)で高くなっている。

V-23図 罪種別謝罪の有無

 謝罪した者について,謝罪のきっかけについて尋ねた結果を見ると,総数では,「自分で考えて」が87.3%,「人に勧められて」が10.2%となっており,いずれの罪種も「自分で考えて」が90%前後になっている。
 V-24図は,被害者に対して謝罪をしたものについて,謝罪の方法を罪種別に見たものである。「自分が会って謝罪した」は,総数では31.1%であるが,業過傷で73.7%と高くなっている。「自分が手紙や電話で謝罪した」は,総数では26.3%であるが,強姦等では47.8%と高い。また,「代理人に謝罪してもらった」は,総数では38.3%であるが,恐喝,強盗及び傷害で,それぞれ61.1%,46.2%,45.9%と高くなっている。

V-24図 罪種別謝罪の方法

 V-74表は,「謝罪するつもりはあるが,していない」と答えた者について,その理由を尋ねた結果を罪種別に示したものである。総数で見ると,「謝罪をする機会がなかった」とするものが80.1%と最も高くなっており,「被害は,大したことがなかった」及び「被害者やその家族に会うのがいやだった」はそれぞれ7.2%,「被害者にも責任があった」は3.5%で,「被害者やその家族に謝罪を拒否された」とするものは2.5%にすぎない。なお,傷害については,「被害者にも責任があった」ことを理由とするものが18.6%と高くなっている。
 また,「謝罪するつもりはない」と答えた者について,その理由を見てみると,総数では,「被害者にも責任があった」が40.5%と最も高く,次いで,「被害は,大したことがなかった」(25.9%),「謝罪をする機会がなかった」(18.4%)の順となっている。罪種別では,「被害者にも責任があった」が恐喝及び傷害で,それぞれ78.3%,64.4%と高くなっている。

V-74表 罪種別謝罪していない理由

 (2)示談及び弁償
 V-25図及びV-26図は,被害者やその家族との示談及び弁償(金銭的償い)の有無を罪種別に見たものである。総数では,示談が「成立した」と答えている者は,34.7%であり,これに,「交渉したが,成立しなかった」及び「交渉中である」を併せると,示談に向けて何らかの行動を起こした者の比率は45.3%である。これに対し,「示談をするつもりはない」とする者の比率は7.1%となっている。さらに,罪種別に見ると,「成立した」と回答した者の比率が高いのは,業過致死(62.5%),業過傷(53.4%),傷害(44.7%)及び強盗(41.9%)であり,これに,「交渉したが,成立しなかった」及び「交渉中である」を併せたものの比率が高いのは,業過致死(82.8%),業過傷(74.0%),強姦等(59.9%)及び傷害(57.8%)で,低いのは殺人等(28.4%)である。
 「交渉したが,成立しなかった」の比率が高くなっているのは強姦等(29.5%)である。一方,「示談をするつもりはない」と答えた者の占める比率が高いのは,恐喝(18.5%)及び傷害(15.6%)である。

V-25図 罪種別示談の状況

 また,「弁償した」と答えている者は,総数では34.8%であり,これに「弁償中である」を併せると41.1%である。罪種別に見ると,「弁償した」と答えている者の比率は,業過致死及び業過傷で,それぞれ65.1%,50,O%と高くなっているのに対し,詐欺等及び殺人等では,それぞれ21.8%,23.1%と低く,その他の罪種は,33%から48%の間となっている。一方,「弁償するつもりはない」は,恐喝(24.1%)及び傷害(19.5%)で高くなっている。さらに,強盗及び殺人等では,「弁償するつもりはない」が,それぞれ6.6%,6.4%と比較的低くなっている反面,「弁償するつもりはあるが,していない」の比率も,それぞれ30.3%,46.2%と高くなっている。

V-26図 罪種別弁償の状況

 (3)償いに対する意識
 V-27図は,「罪のつぐないにとって一番大切なことは何ですか」と尋ねた結果を罪種別に示したものである。

V-27図 罪種別償いに対する意識

 総数では,「社会で更生すること」とするものが51.9%で最も高く,次いで,「裁判の結果に従うこと」(13.4%),「被害者やその家族に謝罪すること」(12.8%),「被害者やその家族の許しを得ること」(10.8%)の順となっている。これを罪種別に見ると,業過致死を除くすべての罪種で,「社会で更生すること」とする比率が最も高くなっているが,これを除くと,業過致死では,「被害者やその家族に謝罪すること」が36.1%,「被害者や家族の許しを得ること」が26.2%,殺人等及び業過傷では,「被害者やその家族の許しを得ること」がそれぞれ30.6%,19.6%と高くなっており,殺人等,業過致死及び業過傷では,償いを被害者等とのかかわりの中でとらえる者の比率が高くなっている。