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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第6章/第1節/4 

4 被害者に対する感情等

 (1)責任の所在に関する認識′
 V-17図は,「今回の事件の責任について,どのように思いますか」と尋ねた結果を示したものである。
 総数では,79.5%の者が,「すべて自分に責任がある」と答えており,「被害者も少しは悪いが,大部分は自分に責任がある」と答えた者も併せると91.5%となっている。これに対し,「自分も少しは悪いが,大部分は被害者に責任がある」及び「すべて被害者に責任がある」を併せた比率は,3.3%にすぎない。
 これを罪種別に見ると,「すべて自分に責任がある」は,窃盗(92.8%),強盗(90.7%),業過致死(90.6%),詐欺等(86.8%)及び業過傷(80,3%)で高く,傷害(30.0%),恐喝(46.6%)及び殺人等(56.5%)で比較的低くなっており,一方,「すべて被害者に責任がある」及び「自分も少しは悪いが,大部分は被害者に責任がある」を併せたものは,恐喝(15.3%)及び傷害(14.3%)で高くなっている。

V-17図 罪種別責任の所在に関する認識

 (2)被害者等に対する感情
 V-18図は,「被害者やその家族に申し訳ないと思っていますか」と尋ねた結果を,罪種別に示したものである。
 申し訳ないと思っていると答えた者の占める比率は,総数では,89.2%であり,罪種別に見ると,業過致死で100.0%となっているほか,強盗,強姦等,窃盗,業過傷,殺人等及び詐欺等で,いずれも90%を超えているのに対し,恐喝では65.8%,傷害では66.7%と低くなっている。一方,申し訳ないと思っていないと答えた者は,総数で6.1%となっており,罪種別では,傷害(23,5%)及び恐喝(20.5%)で高くなっている。

V-18図 罪種別被害者等に対する感情

 さらに,これを暴力団関係の有無別に見たものがV-19図,共犯者のいる者について,犯罪のきっかけ別に見たものがV-20図,被害者との面識別に見たものがV-21図である。
 暴力団関係の有無別に見ると,総数では,申し訳ないと思っていると答えた者の占める比率は,暴力団に関係している者が60.1%と,関係していない者(92.1%)と比べて低くなっている。特に,罪種別に見ると,暴力団に関係している者については,恐喝及び傷害で,申し訳ないと思っていないと答えた者の比率が,それぞれ,37.3%,34.4%と高くなっている。
 共犯者の有無別に見ると,申し訳ないと思っていると答えた者の占める比率は,共犯者がいた者で84.4%,共犯者がいなかった者で90.8%であり,大きな差は見られない。次に,共犯者のいる者について,犯罪に加わったきっかけ別に見ると,申し訳ないと思っていないと答えた者の占める比率は,「自分が共犯者を誘った」が14.6%と最も高く,「共犯者に誘われた」は11.3%,「どちらともなくやろうということになった」が5.4%である。

V-19図 罪種・暴力団関係別被害者等に対する感情

V-20図 犯罪の契機別被害者等に対する感情

V-21図 被害者との面識の有無別被害者等に対する感情

 また,被害者との面識の有無別に見ると,「知らなかった」とする者の90.8%が,申し訳ないと思っていると答えており,「よく知っていた」とする者の85.6%及び「顔や名前ぐらいは知っていた」とする者の84.2%との間に大きな差は見られない。なお,年齢層又は前科の有無別に見ても,その間に大きな差は見られない。
 (3)被害者に対する感情の変化
 V-22図は,「事件の直後と現在とでは,被害者に対するあなたの気持ちは変化していますか」と尋ねた結果を罪種別に示したものである。

V-22図 罪種別被害者に対する感情の変化

 「前よりも,申し訳ないという気持ちが強くなった」と答えた者の比率は,総数では33.6%で,これを罪糧別に見ると,殺人等で51.2%と高く,傷害では19.6%と低くなっているが,その他の罪種は,25%から40%となっている。一方,「いまでも,申し訳ないとは思っていない」と答えた者と「あまり被害者のことを考えなくなってきた」と答えた者を併せると,総数で16.3%を占めており,罪種別では,恐喝で44.8%,傷害で42.7%となっている。
 V-73表は,「前よりも,申し訳ないという気持ちが強くなった」とするものについて,気持ちが変化したきっかけを重複選択で尋ねた結果を罪種別に示したものである。
 総数で見ると,「施設の職員の面接や指導の中で」が40.3%と最も高く,次いで,「裁判を受けたことで」31.2%,「つかまったことで」25.6%,「施設で,教海師や篤志面接委員の面接を受けたことで」17.6%,「示談や弁償の手続をしている中で」9.1%,「謝罪をしたことで」7.1%の順となっている。

V-73表 罪種別被害者に対する感情変化の契機