前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成11年版 犯罪白書 第5編/第6章/第1節/6 

6 まとめ

 受刑者を対象とする今回の特別調査の結果をまとめると,次のとおりである。
 [1] 約8割の者が,被害者にどの程度の被害を与えたかについて「知っている」と答えている。また,被害者に与えた精神的被害に関しては,約6割の者が被害を与えたと認識しており,特に,強姦等では,約8割の者が「大きな精神的被害を与えた」と答えている。また,被害者及びその家族の生活への影響については,「影響はない」と答えた者が2割を超えており,被害者等の生活に与えた影響を認識していない者が少なくないことを示している。
 [2] 被害者やその家族の気持ちを「聞いたことはない」と答えている者が約6割強を占める。また,被害者の気持ちを「知りたいとは思わない」とするものが「知りたいと思う」とするものを上回って,総数で6割を超えており,被害感情に対する関心の低さがうかがえる。さらに,被害者等の被害感情については,「今回の処分で,なっとくしている」が2割強,「すでに自分を許す気持ちになっている」が1割強となっており,今回の処分についても,被害者等は「適当であると思っている」とするものの比率(2割強)が「軽すぎると思っている」とするものの比率(1割強)を上回っているなど,被害感情は融和していると認識している者も少なくない。
 [3] 今回の事件について,「すべて自分に責任がある」と答えた者は全体の約8割であり,「被害者も少しは悪いが,大部分は自分に責任がある」と答えた者を併せると全体の9割を超えるが,恐喝及び傷害では約7割にとどまっている。
 [4] 被害者やその家族に対して申し訳ないと思っていると答えた者の占める比率は,全体の9割近くになるが,恐喝及び傷害では7割に満たない。なお,暴力団に関係している者については,申し訳ないと思っている者の比率は,総数では約6割であり,恐喝及び傷害では,その比率が約5割となっている。また,事件後の被害者に対する気持ちの変化については,「前よりも,申し訳ないという気持ちが強くなった」とするものは全体の3割強であるが,その変化のきっかけについては,「施設の職員の面接や指導の中で」と答えている者が最も多く,4割強を占めている。
 [5] 実際に被害者に「謝罪した」とするものの比率は,全体で4割弱にとどまっているが,謝罪の意思を有している者を含めると9割弱になる。一方,「謝罪するつもりはない」と答えている者の比率は約1割であるが,傷害及び恐喝では2割強になっている。被害者やその家族との示談が成立しているものを含め,示談について何らかの努力をしているものは,殺人等が3割弱にとどまっていることを除けば,半数近くいる。
 [6] 罪の償いとして,「社会で更生すること」が重要であると感じているものが全体の半数を超えており,被害者やその家族に謝罪すること及び許しを得ることとするものは,それぞれ1割強となっているが,特に業過致死及び殺人等では,償いをこれら被害者等とのかかわりの中でとらえるものの比率が高くなっている。