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4 謝罪及び示談・賠償金支払等の状況 (1)加害者側からの謝罪
V-21表は,加害者側の謝罪の状況を罪種別に見たものである。加害者側が「謝罪した」とするものの占める比率が,全体では,約48%と最も高い。これを罪種ごとに見ると,殺人等及び窃盗では,「謝罪を求めたこともないし,加害者側からも謝罪はない」とするものの比率が,それぞれ,約49%及び約51%と,最も高く,「謝罪した」とするものの比率は,それぞれ,約25%及び約35%となっている。その他の罪種では,「謝罪した」の比率が最も高くなっているものの,50%を超えているのは,業過致死(約79%),業過傷(約63%)及び強制わいせつ(約55%)のみであり,傷害等,詐欺等,強盗,恐喝及び強姦では40%台である。なお,「こちらが謝罪を求めたが,加害者側が応じなかった」とするものの比率は業過傷(約12%)において,加害者側からの面会や謝罪の申し出をこちらが拒否した」とするものの比率は強姦及び強制わいせつ(約12%及び約11%)において,それぞれ,他の罪種と比べて比較的高くなっている。 謝罪があったものについて,その方法を尋ねたところ,全体では,「代理人による謝罪」の比率(約54%)が最も高く,次いで「本人が会って謝罪」(約39%),「本人が手紙や電話で謝罪」(約25%)の順となっている。罪種ごとに見ると,業過致死(約89%)及び業過傷(約89%)では,「本人が会って謝罪」の比率が最も高くなっている。しかし,その他の罪種では,「代理人による謝罪」の比率が60%台から80%台と,最も高くなっており,この比率を「本人が会って謝罪」又は「本人が手紙や電話で謝罪」のいずれかがあったものの比率と比較すると,その差が殺人等及び傷害等では5ポイント以内であるのに対し,窃盗,恐喝,強姦及び強制わいせつでは,「代理人による謝罪」の比率が,30ポイント以上高くなっている。 V-19表生活面の影響の有無・内容(罪種別) V-20表 遺族回答者の生活面の影響の有無・内容(続柄別) V-21表 謝罪の状況(罪種別) また,殺人等及び業過致死の遺族に,加害者側のその他の慰謝の措置(加害者本人のほか,その親族・代理人によるものを含む。)について尋ねたところ,「通夜・葬儀への出席」のあったものは殺人等で約21%,業過致死で約86%,「香典・お花代などの提供」のあったものは殺人等で約36%,業過致死で約87%,「命日その他に,墓参やご位牌・ご遺影などにお参り」のあったものは殺人等で約13%,業過致死で約57%であった。(2)示 談 V-22表は,加害者側との示談の状況を罪種別に見たものである。全体では,示談が「成立した」とするものの比率が約36%である。これを罪種別に見ると,業過致死(約58%)で高くなっているが,その他の罪種では,殺人等以外の罪種で30%台から40%台であるのに対し,殺人等では約10%にすぎない。これに「交渉中である」を加えたものの比率を見ても,業過致死(約85%)及び業過傷(約68%)以外の罪種では,いずれも50%を下回っており,殺人等においては約20%にすぎない。「示談の申し出があったが,こちらが拒否した」の比率は,恐喝,強姦及び強制わいせつでほぼ20%と,他の罪種と比べ,高くなっており,「示談の申し出がなかった」の比率は,殺人等,強盗及び窃盗で高く,いずれも50%以上であるが,特に殺人等では約66%を占めている。 示談が「成立した」と回答した被害者等に,示談金額を尋ねた結果を罪種別に見たものが,V-23表である。殺人等では,すべて500万円を超えており,業過致死では,500万円を超えるものが90%以上を占め,最低額は300万円である。一方,その他の罪種では,100万円以下のものが50%以上を占めており,これと500万円以下のものを加えたものの比率は,おおむね80%以上となっている。 V-22表 示談の状況(罪種別) (3)賠償金の支払状況等加害者側からの,賠償金,示談金,慰謝料等,名目のいかんを問わず,損害・被害を償う趣旨の金(交通事故の場合は,加害者側が加入していた保険による支払を含む。以下,本章において「賠償金」という。)の支払状況について,罪種別に見たものが,V-24表である。全体を見ると,「全額支払いがあった」とするものの比率は約31%で,これに「一部支払いがあり,残りも今後支払われる予定である」を加えたものの比率は,約39%である。罪種別では,「全額支払いがあった」とするものの比率の最も高いのは業過致死の約59%で,最も低いのは殺人等の約7%である。また,これに「一部支払いがあり,残りも今後支払われる予定である」を加えたものの比率を見ると,業過致死(約72%)及び業過傷(約67%)で高くなっているのに対し,その他の罪種では,強姦,強制わいせつ,恐喝及び窃盗で30%台から40%台,詐欺等,傷害等及び強盗で20%台,殺人等で約10%となっている。一方,「全く支払いはなく,支払いの見込みもない」とするものの比率は,業過致死及び業過傷では10%未満であるが,その他の罪種では,おおむね40%以上となっており,特に,殺人等では約69%と最も高くなっている。 V-23表 示談金額(罪種別) V-24表 賠償金支払状況(罪種別) 「全額支払いがあった」と回答した被害者等に,支払われた金額を尋ねた結果を罪種別に見たものが,V-25表である。殺人等及び業過致死では,500万円を超えるものが,それぞれ約67%,約96%であり,最低額は,殺人等で100万円,業過致死で300万円である。それ以外の罪種では,業過傷を除き,100万円以下のものがおおむね50%以上を占めており,これと500万円以下のものを加えたものの比率は,おおむね90%以上となっている。V-25表 賠償金額 「全額支払いがあった」と回答した被害者等に,支払者を尋ねたところ,「加害者の親族」127人(全額賠償金の支払があったものの約39%),「加害者の加入している保険会社」102人(同約31%),「加害者本人」39人(同約12%),「加害者の知人」6人(同約2%)などとなっている。さらに,これを罪種別に見ると,「加害者本人」の比率は,との罪種でも30%未満であり,「加害者の親族」の比率は,10%未満の業過致死及び業過傷を除き,おおむね40%以上となっている。「加害者の加入している保険会社」の比率は,業過致死及び業過傷で80%を超えている。また,「全額支払いがあった」と回答した被害者等に,賠償金の額について納得しているかを質問したところ,全体では,「やや不満は残るが,おおむねなっとくしている」とするものの比率(約28%)が最も高く,これに「なっとくしている」を加えたものの比率は,約52%となっている。これを罪種別に見ると,「なっとくしている」とするものの比率は,窃盗及び詐欺等で50%を超えており,これに「やや不満は残るが,おおむねなっとくしている」を加えたものの比率は,殺人等,業過致死及び強姦以外の罪種で50%を超えている。これに対し,殺人等では,「なっとくしていない」の比率が約57%,強姦では,「なんともいえない」の比率が約42%と,いずれも他の罪種と比べ,最も高い比率となっている。 (4)保険金の受領状況 V-26表は,被害者等の側で加入していた,生命保険,傷害保険,医療保険,労災保険,盗難保険などの保険金(以下,本章において「保険金」という。)の受領状況について,罪種別に見たものである。全体を見ると,「支払いを受けていない」とするものの比率が最も高く約53%であり,「支払いを受けた」とするものの比率は約36%である。罪種別では,「支払いを受けた」とするものの比率が高いのは,殺人等,業過致死,傷害等及び業過傷である。「支払いを受けた」とするもののうち,賠償金について「全く支払いはなく,支払いの見込みもない」とするもの(本項(3)参照)の占める比率は,殺人等で約75%,業過致死で約7%,傷害等で約30%,業過傷で約8%となっている。 また,「支払いを受けた」と回答した被害者等に,支払額が損害のすべてを補てんするものとして十分な額だったかを質問したところ,全体では,「十分な額だった」とするものの比率は約15%で,これに「不十分だったが,一応なっとくできる額だった」を加えたものの比率は約43%となるが,「不十分な額だった」とするものの比率も約37%に上っている。殺人等及び傷害等では,「不十分な額だった」とするものの比率が,それぞれ約45%,約52%と高くなっており,業過致死(約29%)及び業過傷(約33%)を上回っている。 V-26表 保険金受領状況 (5)民事訴訟提起状況V-27表は,事件による損害について,民事裁判を起こしたかどうかを尋ねた結果を罪種別に見たものである。各罪種共に,「起こしておらず,今後も起こすつもりはない」とするものの比率が最も高い。特に,窃盗及び強盗では,80%を超えている。「起こしていないが,今後はわからない」とするものの比率が高いのは,業過傷(約41%)及び殺人等(約36%)である。「起こした」と「今後起こす予定である」を併せたものの比率は,殺人等(約26%),業過致死(約23%)及び傷害等(約22%)で高く,また,「起こした」とするものの比率は,業過致死(約18%),強制わいせつ(約15%),殺人等及び強姦(各約13%)で比較的高くなっている。 V-27表 民事裁判提起状況 V-28表は,民事裁判を「起こした」又は「今後起こす予定である」と回答した被害者等に起こした理由を,また,民事裁判を1起こしておらず,今後も起こすつもりはない」又は「起こしていないが,今後はわからない」と回答した被害者等に起こしていない理由を,それぞれ尋ねた結果を罪種別に見たものである。民事裁判を起こした理由又は起こす理由を尋ねた結果を罪種ごとに見ると,窃盗(約67%)及び詐欺等(約89%)で,「損害を取り戻したいから」とするものの比率が最も高くなっているのを除いて,その他の罪種では,「加害者に謝罪や反省を求めるため」とするものの比率が最も高く,恐喝で約60%であるほかは,70%を超える高い比率を示しており,特に強制わいせつでは90%を超えている。 これに対し,民事裁判を起こしていない理由を尋ねた結果を見ると,「これ以上相手と関わりたくない」(約62%)とするものの比率が最も高く,「勝訴しても,相手方の資力から見て,損害が取り戻せない」(約32%)がこれに次いでいるが,「費用が高くつく」も約21%,「民事裁判を起こす方法がわからない」及び「裁判に時間がかかる」も各約16%となっている。罪種ごとに見ると,殺人等(約68%)及び詐欺等(約55%)で,「勝訴しても,相手方の資力から見て,損害が取り戻せない」とするものの比率が最も高くなっているのを除き,各罪種共に「これ以上相手と関わりたくない」とするものの比率が最も高く,特に恐喝,強姦及び強制わいせつでは,80%前後となっている。 V-28表 民事裁判提起・不提起の理由 |