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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第2章/第1節/1 

第2章 犯罪被害とその国家的救済

第1節 犯罪被害の実態

1 犯罪被害者数の推移

 V-1表は,被害者が個人である場合について,平成元年以降の10年間に,警察に認知された刑法犯(交通関係業過を除く。以下,本節において同じ。)の男女別被害者数及び被害発生率(人口10万人当たりの被害者数をいう。)の推移を見たものである。
 被害者数は,男女共に,近年おおむね横ばいであったが,女子は平成8年から,男子は9年から増加している。被害発生率は,3年以降,男子で1,700台,女子でおおむね800台で推移していたが,10年には,男子が1,900台,女子が900台にそれぞれ上昇しており,元年以降,男子の被害発生率は女子の約2.1倍から約2.2倍となっている。

V-1表 男女別刑法犯被害者数・被害発生率

 (1)生命・身体の被害
 V-2表は,平成元年以降の10年間について,警察に認知された刑法犯により生命・身体に被害を受けた者の数及びその被害発生率の推移を見たものである。死亡者数はおおむね減少傾向にあったが,9年から増加し,10年は前年と比べて70人(5.5%)増加した。また,重傷者数及び軽傷者数は,地下鉄サリン事件の被害者が計上されている7年を除き,3年以降,おおむね横ばいの状態にあったが,9年からは増加している(罪名別死傷者数については,巻末資料V-1参照。)。

V-2表 生命・身体に被害を受けた犯罪被害者数・被害発生率

 なお,上記地下鉄サリン事件は,平成7年3月20日,東京都内の地下鉄電車内において,猛毒ガスのサリンの発散により,乗客等11名が死亡し,多数の者が負傷した無差別テロ事件であり,同事件では,オウム真理教関係者が殺人等で起訴されている(オウム真理教関係者に係る一連の事件の裁判の審理及び科刑状況については,第2編第3章第7節参照。)。
 (2)財産上の被害
 V-3表は,平成元年以降の10年間に,警察に認知された財産犯(本節では,強盗,恐喝,窃盗,詐欺及び遺失物等横領を含む横領をいう。)による財産上の被害について,被害者数,被害総額及び一人当たりの被害額の推移を見たものである。被害者数は,3年以降漸増傾向にあったが,6年から横ばいとなり,さらに,9年からは再び増加している。被害総額及び一人当たりの被害額は,いずれも2年から4年までは増加し,5年以降減少したものの,8年からは再び増加したが,10年には減少し,一人当たりの被害額が約15万8,000円となっている。

V-3表 財産上の被害表受けた犯罪被害者数及び被害額

 (3)性犯罪による被害
 V-4表は,平成元年以降の10年間に,警察に認知された強姦及び強制わいせつによる被害者数及び被害発生率の推移を見たものである。強姦による被害者数及び被害発生率は,2年から8年まではおおむね横ばいの傾向にあったが,9年からは増加・上昇傾向を示している。強制わいせつによる被害者数及び被害発生率は,3年以降ほぼ一貫して増加・上昇傾向にあったが,10年は減少・低下している。

V-4表 性犯罪被害者数・被害発生率

 (4)交通事故による被害
 交通事故による死傷者数の推移については,第4編第4章で述べたとおりであり,死亡者数は平成5年以降減少傾向にあるが,負傷者数は,昭和53年以降ほぼ一貫して増加傾向にある(IV-20図参照)。V-5表は,平成元年以降の10年間について,交通事故死傷者のうち未成年者及び60歳以上の者の数及び発生率の推移を示したものである。

V-5表 未成年者・ 60歳以上の者の交通事故死傷者数及び発生率

 16歳未満の未成年者について見ると,死亡者数及びその発生率は,平成2年以降おおむね減少・低下していたが,10年には増加・上昇している。負傷者数は,6年以降おおむね横ばいであるが,その発生率は3年以降上昇傾向にある。一方,16歳以上の未成年者については,死亡者数及びその発生率が,5年以降一貫して減少・低下し,負傷者数も2年以降一貫して減少しているが,その発生率は7年以降上昇傾向にある。他方,60歳以上の者については,死亡者数は,2年以降7年まで増加傾向にあったが,8年からは減少し,その発生率も5年以降おおむね低下している。また,負傷者数は2年以降増加し,その発生率も3年以降上昇している。