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 平成11年版 犯罪白書 第4編/第4章/第2節/1 

第2節 交通犯罪者の処遇

1 検察庁における処理状況

 昭和54年以降の20年間について,交通関係業過の起訴率及び起訴猶予率の推移を見ると,62年以降,起訴猶予率が上昇し,起訴率が下降しており,平成10年は,起訴猶予率が86.8%(前年比1.7ポイント増),起訴率が12.9%(同1.7ポイント減)となっている。
 この変化の背景には,特に,傷害の程度が軽微で,かつ過失の態様が悪質でない事案については,[1]「国民皆免許時代」,「くるま社会」において,軽微な事件により国民の多数が刑事罰の対象となるような事態となることは,刑罰の在り方として適当ではないこと,[2]保険制度が普及し,治療費や修繕費に対する保険による補償が充実してきたこと,[3]交通事故の防止は,刑罰のみに頼るべきものではなく,行政上の規制・制裁をはじめ,各種の総合的な対策を講ずることによって達成されるべきものであること,及び[4]交通関係業過は,従来から,その多くが略式手続によって処理され,少額の罰金が科されていたが,このような事態は,罰金の刑罰としての感銘力を低下させ,刑事司法全体を軽視する風潮を招来するおそれがあることなどを理由に,検察庁において自動車等による業務上過失傷害事件の処理の在り方等について見直しがなされたことなどがあるものと考えられる。
 道交違反については,90%以上の起訴率が続き,起訴猶予率は2%台から6%台で推移している(第2編第2章第4節参照)。
 IV-23図は,平成10年における終局処理区分別構成比を,一般事件と交通事件とに分けて見たものである。交通関係業過と道交違反の公判請求の比率は,いずれも一般事件と比べて極めて低い。また,道交違反の略式命令の比率は極めて高く,不起訴(そのほとんどは起訴猶予)の比率は低くなっている。

IV-23図 検察庁終局処理人員の処理区分別構成比