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 平成11年版 犯罪白書 第4編/第3章/第3節/3 

3 外国人犯罪者に対する矯正及び更生保護

 (1)成人矯正
 平成10年の外国人新受刑者は1,269人であり,前年と比べ,119人増加している。IV-19図は,外国人新受刑者のうち,「日本人と異なる処遇を必要とする外国人」と判定された者(以下「F級新受刑者」という。)の推移を見たものである。

IV-19図 F級新受刑者数の推移

 平成10年のF級新受刑者の罪名別人員は,窃盗が178人(25.2%)で最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反及び入管法違反各127人(18.0%),強盗61人(8.6%),殺人36人(5.1%),麻薬取締法違反35人(5.0%)の順となっている(矯正統計年報による。)。
 F級受刑者(F級と判定された外国人受刑者をいう。)は,言語だけでなく,風俗・習慣・宗教上の慣行等において日本人の受刑者と著しく異なる点があり,男子は府中・横浜・横須賀・黒羽・大阪・神戸・名古屋・広島・福岡・札幌の各刑務所に,女子は栃木及び和歌山刑務所に収容され,必要に応じて日本人とは異なる処遇を受けている。特に,近年におけるF級受刑者の急増に伴い,平成7年には府中刑務所に,9年には大阪刑務所に,それぞれ国際対策室を設置し,外国語による被収容者の面会,信書の発受等に際しての通訳・翻訳業務の円滑な実施を図っている。
 平成10年12月31日現在のF級受刑者数は,1,269人(男子1,197人,女子72人)である。
 (2)更生保護
 平成10年の外国人保護観察対象者(韓国・朝鮮及び中国の国籍を有する永住者等を除く。)の新規受理人員は551人であり,前年と比べ,20.6%増加している。これを保護観察の種類別に見ると,仮出獄者(308人)が最も多く,以下,保護観察処分少年(171人),保護観察付き執行猶予者(44人),少年院仮退院者(28人)の順となっている(保護統計年報による。)。
 IV-8表は,平成8年から10年の各12月31日現在における,特別永住者を除く外国人保護観察対象者を出身地域別及び保護観察の種類別に見たものである。外国人保護観察対象者の総数は,10年が757人であり,前年の715人と比べ,5.9%増加している。中でも,アジア地域の出身者が最も多く,63.3%を占めている。
 保護観察の対象となる外国人については,日本語による意思伝達の困難な者が多いこと,通訳人の確保が容易でないこと,本人が成育した社会の文化や制度の違いから生活習慣や規範意識が異なること,職場開拓が難しいこと,福祉・医療の援助が得にくいことなどの処遇上の問題点が挙げられる。これに対処するため,保護観察に関する対訳付き説明書の作成,民間協力による通訳人の確保,保護観察官に対する語学研修等が行われている。

IV-8表 保護観察係属中の外国人の出身地域別人員