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 昭和38年版 犯罪白書 第四編/第三章/二 

二 麻薬受刑者の全国一斉調査

 麻薬犯罪が大きな社会問題として取り上げられているおりから,矯正施設に収容されている麻薬犯罪者の実態を明らかにして,その処遇上の施策に役だてるため,法務省矯正局では法務総合研究所の協力のもとに,麻薬受刑者の全国一斉調査を実施した。
 調査対象者は昭和三七年一一月一〇日現在,全国の拘置所,刑務所および少年刑務所に,麻薬関係の罪名(注)で収容されている全受刑者一,六三九名である。(注麻薬関係事犯の罪名には麻薬取締法違反のほか,あへん法違反および大麻法違反があるが,本調査ではあへん法違反者が一名あっただけで他のすべては麻薬取締法違反者であった。)
 調査対象者の内訳はIV-21表のとおり,男子一,三九八名,女子二四一名で,女子の占める比率は約一七%である。また昭和三六年一二月末日現在の収容人員と比較すると,総数においては四七七名の増加を示しており,昭和三二年を一〇〇とした指数では二六七,女子だけについて見ると二九八の高率であることがわかる。次に対象者を,使用者(麻薬を自己使用するだけで密売とは無関係の者),密売者(麻薬の密売関係者で自己使用の経験のない者),および使用密売者(自己使用と密売とを兼ねる)の三群に分けると,男子ではこの三群がほぼ同数であるが,女子では密売関係の者が少なく,使用だけの者が全体の三分の二を占めている。「その他」の三〇名は,使用,密売のいずれにも関係がないと主張したり,犯行を全く否認している者で集計の対象にならないので除外した。前述のあへん法違反の一名も,この中に含まれている。

IV-21表 麻薬関係受刑者の調査対象者内訳

 調査票の第一次集計の結果から,麻薬受刑者の一般的特性ないしは傾向と考えられるもののいくつかを拾ってみると,次に述べるとおりである。