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 昭和38年版 犯罪白書 第四編/第二章/四/1 

四 国際協力機構と外国における取締状況

1 麻薬に関する国際条約

 既に述べたところにより明らかであるように,麻薬については一国だけで,その取締りの目的を達することは困難であり,国際協力が不可欠である。このため一九〇九年二月,アメリカ大統領セオドール・ルーズベルトがシャンハイで国際会議を開き,あへんの不正使用について討議して以来,いくたびか国際会議が開催され,多くの国際条約が締結されており,わが国もまた,ほとんどすべての条約に加入している。締結された条約を年代順に列挙すると,次のとおりである。
 (1)国際あへん条約および最終議定書(ヘーグあへん条約)一九一二年一月二三日,ヘーグで署名 (2)第一あへん会議協定および議定書(第一あへん条約)一九二五年二月一一日,ジュネーブで署名 (3)第二あへん会議条約および議定書(第二あへん条約)一九二五年二月一九日,ジェネーブで署名 (4)麻薬の製造制限および分配取締りに関する条約(いわゆる制限条約)一九三一年七月一三日,ジェネーブで署名 (5)あへんの吸食防止に関する協定,一九三一年一一月二七日,バンコックで署名 (6)危険薬品の不正取引の防止に関する条約,一九三六年六月二六日,ジュネーブで署名 (7)麻薬に関する協定,条約および議定書を改訂する議定書,一九四六年一二月一一日,レーク・サクセスで署名 (8)麻薬の製造制限および分配取締りに関する条約の範囲外の薬品を国際統制の下に置く議定書,一九四八年一一月一九日,パリで署名 (9)けしの栽培ならびにあへんの生産,国際取引,卸取引および使用の制限および取締りに関する議定書,一九五三年六月二三日,ニューヨークで署名
 以上あげた九つの協定,条約および議定書は,現在いずれも効力をもち,それぞれが当事国を拘束している状態で,非常に複雑な体系をなしている。これら多数の条約を一本にまとめ,国際的麻薬管理を整理統合し,より簡明で実効のある方法に統一するため,麻薬についての単一条約制定の試みが,一九四六年以来討議され,以来一〇有余年にわたり慎重に審議が行なわれた結果,一九六一年三月,ニューヨーク国連本部において,日本を含めた七三か国参加のもとに,「一九六一年の麻薬単一条約」が締結された。そして日本は現在,同条約批准のための国内手続を準備中である。