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 昭和38年版 犯罪白書 第三編/第五章/二/2 

2 少年院仮退院者

 保護観察開始時における少年院仮退院者の出頭率を,最近五年間の統計によってみると,III-73表のとおりで,不出頭者は二ないし六%であって,各種保護観察対象者中最も低率であり,しかも逐年減少の傾向にある。これを法務総合研究所で実施した少年院仮退院者なりゆき調査(前掲,少年院からの仮退院の項参照)の抽出標本九〇七人についてみると,自発的出頭九一・六%,呼出しによる出頭一・五%,不出頭六・六%であった。

III-73表 少年院仮退院者の出頭状況(昭和32〜36年)

 しかし,所在不明者の比率となると,III-74表に示すように,少年院仮退院者の所在不明の比率は,保護観察処分少年よりも高く,しかも逐年高まる傾向にある。なお,前掲の法務総合研究所で調査した九〇七人についてみると,本人が仮退院により指定帰住地に帰住した後,保護観察期間中にその帰住地から他所に移動した者は,総数の四〇%に近く,また最初に移動するまでの期間をみるに,三か月未満の者がそのうちの七〇%近くを占めている。その理由はいろいろあろうが,このような移動が所在不明の原因ともなり,保護観察を困難にしていることは,いなめないところである。

III-74表 少年院仮退院中の所在不明人員(昭和32〜36年)

 次に保護観察終了時の成績についてみると,III-75表のとおりであって,無事期間を経過した者は八割前後にすぎず,成績は必ずしも良くない。これは保護観察に付されている期間が長いからでもあるが,それにしても,成績良好者に対してとられる退院の数が累年減少し,成績不良者に対してとられる家庭裁判所による取消および戻し収容申請の数が増加していることは,注目すべき現象であろう。

III-75表 少年院仮退院者の保護観察終了事由別比率(昭和32〜36年)

 また法務総合研究所で,昭和三二年に全国の少年院から仮退院した者六,三三一人のうち,受理保護観察所別に九〇七名を比例抽出し,そのなりゆきを調査したところによると,III-76表のとおり,保護観察期間中に逮捕もされず,また再収容もされなかった者は四六・三%であって,半数以上の者が再犯をしている。

III-76表 少年院仮退院者907人の追跡調査による再犯人員と比率

 以上述べてきたように,少年院仮退院者の中には資質面にかなり問題を持った者が多く,しかも仮退院後における保護観察成績は必ずしも良くない。このことは仮退院の運用についても,さらに検討の余地があるとともに,保護観察の実施方法に,なお,くふうを要するもののあることを示唆するものといえよう。