2 教科教育と通信教育 少年刑務所の収容者のうちにも,義務教育未修了者の数はかなり多い。法務省矯正局の調査によれば,川越,松本,奈良,岩国および佐賀の各少年刑務所の昭和三七年末収容人員(準少年および青年受刑者若干を含む)の計二,五一〇人のうち,不就学のもの六人,小学校未修了のもの六五人および中学校未修了のもの四三五人となっており,義務教育未修了者の合計は五〇六人で,これは収容人員の二〇・二%にあたる。 少年刑務所では,これらの義務教育未修了者のほか,修了者のなかでも学力の低いものに対して,教科教育を施して,社会復帰後の更生に役だてようとしている。前記五施設における昭和三七年末現在の教科教育実施人員は,小学校課程一二六人,中学校課程五九一人で,このほか高校中退者等で学力補習を希望するものや職業訓練生を対象として高等学校課程の教科教育を施しているもの六五人である。少年院においては,院内で実施した教科教育の修了者に対して,少年院の長が修了証書を発行することのできる制度が認められているが,従来少年刑務所にはかかる制度がなく,出所後の更生復帰の一つのさまたげとなっていたが,昭和三〇年四月から松本少年刑務所では,所内に松本市立旭町中学校の分校が設立されたので,この問題を解決することができた。昭年三七年三月までの同分校卒業生は合計一五七人である。 以上の教科教育は,施設の教官等によって学習指導がなされているが,特殊課目の受講を希望する者に対しては,その能力,資格などを選考の上,一般社会の通信教育を受講させている。通信教育受講の費用は公費によってまかなわれるが,余裕のある一部の者は,私費による受講も許されている。法務省矯正局の調査によれば,前記五施設の昭和三七年末現在の通信教育受講者数は簿記三九人,自動車技術三一人,ラジオ・テレビ・電気工学等三二人,孔版一五人,速記,書道,美術等四五人,建築二人,英語一四人および大学・高校五四人の計二三二人となっている。
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