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 昭和38年版 犯罪白書 第三編/第二章/二/1 

二 少年鑑別所における鑑別

1 収容状況

 少年鑑別所は昭和二四年,新少年法の施行と同時に,家庭裁判所で取り扱う非行少年やぐ犯少年の資質の鑑別と,その身柄を保護収容するために設けられた国家機関で,その施設は全国の都道府県庁所在地四六か所と,北海道の函館,旭川,釧路および福岡県の北九州市(小倉区)の四か所,計五〇か所に設けられているほか,少年鑑別支所が福島県平市に一庁ある。
 全施設の収容定員は合計二,三一〇人(昭和三六年一二月末日現在)で,これに対して職員の定員は教官五三〇名,技官一六八名,事務官および雇よう人四三五名,合計一,一三三名である(昭和三六年一二月末日現在)。職員数は施設の大小により相違があるが,一庁あたりの平均職員数は二二・二名となっている。
 少年鑑別所に収容される少年は,家庭裁判所が受理した非行少年およびぐ犯少年のうち,その心身の鑑別を行なう必要があると認められる者,あるいは適当の保護者がない等の理由から,そのまま放置することのできない少年などで,その収容に際しては,裁判官の発する観護措置状によらなければならない。観護措置による収容期間は,原則として二週間であるが,必要があれば一回だけ更新され,最長四週間の収容ができることになっている。ところが,少年ひとりあたりの平均収容期間を調べると約二一日となり,大多数の収容少年が更新決定を受けていることがわかる。
 昭和三六年度の入所人員は,III-21表の示すとおり,総数四〇,五九四名で,前年の四一,八一二名より約三%の減少を示し,また一日平均収容人員でも,ほぼ同率の減少がみられる。しかし女子だけについてみると,入所人員ではほぼ同数であるが,一日平均収容人員では,わずかではあるが増加を示している。

III-21表 少年鑑別所入所人員と一日平均収容人員(昭和31〜36年)

 昭和三一年以降,年々増加の一途をたどってきた収容状況は,昭和三六年でようやく横ばい,もしくは下降の傾向を示したのであるが,これをもって,直ちに今後入所人員が減少すると考えることは危険であると思われる。それは,家庭裁判所に送致される少年事件の数は,いっこうに減少しておらず,道交違反事件を除いた一般保護事件の少年だけをみても,昭和三六年は前年を約二・八%上回っているからである。
 昭和三六年の新収容者の年齢別分布を,前年と比較してみると,III-22表に示すとおり,一五才以上の少年が,一,二の例外を除けば一般に減少の傾向を示しているのに対して,一四才以下の少年がいずれも増加している。とくに一四才では,実数で五七一名,約一・三倍の増加が見られるが,この年齢層がいわゆるベビー・ブームの世代に該当することを考えればむしろ当然の結果といえよう。

III-22表 少年鑑別所新収容者年齢別人員(昭和35,36年)

 収容定員に対する一日平均収容人員の比率は,全施設の年間平均では九〇・四%で,収容定員を下回っているのであるが,各施設別にみると,その間にいちじるしいアンバランスがみられ,一般に大都市およびその周辺の施設では,過剰収容を続けているところが少なくない。なかでも神戸(一三三%),横浜(一三二%),名古屋(一二六%)等がもっとも高率を示している。
 少年鑑別所の収容人員が,時期的にいちじるしく変動することは,すでに何回も指摘されたところであるが,ある時は定員を下回るかと思えば,またある時は急激に増加して,定員の一・五倍から二倍以上になることもまれではない。したがって,少年鑑別所の収容定員は,一日平均収容人員をかなり上回るものであることが必要であって,とくに年間の平均収容率が一〇〇%を越える施設は,その拡充強化が喫緊の要務であるといえる。
 また収容少年は,質的にもきわめて多種多様であって,男女の別はもちろん,初入者と再入者,年長少年と年少少年等を分隔収容する必要があり,その意味からも施設の拡充が必要であるとともに,その機能を十分発揮できるよう,いっそうの改善が望ましいと思われる。