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 昭和38年版 犯罪白書 第二編/第六章/四/1 

1 保護観察所への出頭状況

 保護観察の開始にあたって,保護観察所への対象者の出国を確保することは,保護観察の趣旨を理解させ,遵守事項を印象づけ,事後の保護観察を軌道に乗せる上から,非常に重要なことである。II-108表およびII-109表は,対象者の種別ごとに出頭状況をみたものであるが,これによると,仮出獄者,少年院および婦人補導院からの仮退院者等の矯正施設からの仮釈放者は,比較的出頭率が高く,これに対して,保護観察処分少年や保護観察付執行猶予者等のように,裁判所から直接保護観察所の保護観察下にはいってくる対象者の出頭率は悪い。これは,仮出獄者や仮退院者は,仮釈放審理のため地方委員会の委員が面接する際とか,本人が仮釈放されるとき矯正施設の職員から,厳重に保護観察所への出頭が指示されるからであろう。保護観察付執行猶予者の出頭率が悪いのは,いろいろな理由があるであろうが,その理由の一つとしては,裁判所において保護観察に付する旨の判決言渡しがなされても,これが確定して保護観察にはいるまでには,検察官と被告人の双方から上訴権の放棄がなされないかぎり,一四日間の空白期間があり,また仮釈放の場合のように,特別遵守事項によって帰住地が指定ざれるのではなく,本人みずからが住居を定めて保護観察所長に届け出ればよく,住居の変更も自由に行ないうることなどがあげられる。したがって,本人からの自発的出頭がないかぎり,保護観察所としては,言渡し裁判所から刑執行猶予言渡し通知書またはその対応検察庁からの刑執行猶予確定通知書を受理するまでは,対象者を全く知ることができないのである。裁判所において,判決言渡しの際,十分本人に保護観察の趣旨を説示,理解させておく必要があるとともに,保護観察所としても,裁判所からの言渡し通知が円滑にうけられるよう常時連絡を図り,また言渡通知によって,刑確定の日が予測できる場合は,積極的に刑確定の有無を調査し,出頭の確保に努める必要があろう。

II-108表 保護観察開始時における保護観察対象者の出頭状況(昭和36年)

II-109表 保護観察開始時における出頭状況累年別人員(昭和32〜36年)

 保護観察所への不出頚者に対しては,保護観察所で,直接呼出状によったり,あるいは保護司,保護者を通じたりして,保護観察所その他適当な場所に出頭するよう促すのであるが,中にはすでに所在不明になっている者もあり,また再犯に陥っている者も少なくないようである。昭和三三年東京保護観察所の保護観察に付された保護観察付執行猶予者(日本人,男子,窃盗)四三七人について,その後二年間の再犯率を調べると,II-110表のとおりであって,不出頭者と再犯との関係がきわめて密接であることがわかる。

II-110表 保護観察付執行猶予者の出頭状況と再犯の関係